没後110年
明治の末から大正初期に活躍した画家・今村紫紅(1880-1916)の42年ぶり、かつ公立美術館では初の大回顧展です。平安時代から続く伝統的なやまと絵を学び、若くして歴史画において高い技量を示した紫紅は、やがて、日本画の革新を志します。琳派の俵屋宗達などの自由闊達な絵に刺激を受け、さらに南画(中国・江南地方の絵画に影響を受けて江戸後期に栄えた山水画)や、西欧の印象派などの新しい表現も取り入れて、風景画に強烈な個性を発揮しました。《熱国之巻》や《近江八景》(いずれも国指定重要文化財)に代表される、思い切った筆づかいと構図、明るい色がその特徴です。35年の生涯を力強く駆け抜けた今村紫紅の創作の軌跡を、初公開作品を数多く含む約200点を選りすぐり、4章構成でたどります。なお、各章のタイトルは紫紅自身のことばから採られています。
第1章 「古画のよい処を分解して、その後を追え!」
第2章 「絵画は矢張(ヤハリ)多方面に描け!」
-1 三溪との出会い
-2 紫紅と琳派
第3章 「自由も、新も我にあり!」
第4章 「暢気(ノンキ)に描け!」
1. 42年ぶり、公立美術館では初の大規模な回顧展
昭和59年(1984)に山種美術館で開催されてから42年ぶり、公立美術館では初の大規模な紫紅の回顧展です。
2. 紫紅の全体像に迫る決定版となる展覧会
国指定重要文化財を含む紫紅の代表作をはじめとする、約200点が一堂にそろう、またとない機会です。
3. 初公開の作品多数
個人のコレクションから約40点の作品が初公開されます。
第1章 「古画のよい処を分解して、その後を追え!」
明治13年(1880)、今村紫紅は横浜の提灯問屋に生まれました。17歳で上京し、歴史画の大家の松本楓湖に入門します。師のもとで粉本(古典的な画題や筆法を習うための手本)を徹底的に模写し、郊外の写生にもつとめ、本格的に日本画の修行をはじめました。ほどなく、創立まもない日本美術院の展覧会で賞を得るなど、歴史画の分野で頭角をあらわします。この章では、模写などを通して「古画のよい処」を吸収しつつ、新しい歴史画の開拓をめざした青年期の模索の様子をたどります。
第2章 「絵画は矢張(ヤハリ)多方面に描け!」
-1 三溪との出会い
-2 紫紅と琳派
日本美術院の有望な若手メンバーとなった紫紅は、創立者の岡倉天心の教えや、先輩画家の横山大観、下村観山、菱田春草らの制作に大きな刺激を受けます。いち早く俵屋宗達などの琳派や、中国の明清時代の古画にも着目し、創作の幅をひろげていきます。また文展に出品した《護花鈴》が、桃山文化に傾倒していた横浜の実業家・原三溪の目にとまり、三溪の支援が決まります。この章では、三溪の力強い援助を得た紫紅が、古画の本質を見極めて、さまざまな主題に取り組み「多方面に」描いた作品を紹介します。
第3章 「自由も、新も我にあり!」
三溪の支援を得て生活が安定した紫紅は、画業の転機となる《近江八景》を発表します。古来名所絵に描かれた琵琶湖周辺を旅し、写生にもとづいた風景画として描いたものです。明快な色と構図には、古典的な風景画の慣例に囚われないのびのびとした心境が表れています。翌々年にはさらに新境地を求め、病後にもかかわらず、インドへと旅立ちます。道中で見た光景を絵巻に描いた《熱国之巻》は、日本画のジャンルに収まらない問題作として、賛否を巻き起こしました。この章では、芸術の「自由」や「新」は他者の中ではなく「我にあり」と語った紫紅の、果敢な挑戦をたどります。
第4章 「暢気(ノンキ)に描け!」
再興日本美術院の中心的存在となった紫紅は、後輩たちを導き、日本画の革新に尽くしました。理想と考えたのは、若い画家が生活に困ることなく、自由快活に、描きたい絵を追求できること、すなわち「暢気に描け」る環境でした。後輩たちとの研究会「赤曜会」は、その実践の一つでした。一方で自らは、古臭いものとされていた江戸時代の「南画」を再評価し、「新南画」ともいうべき作風を展開しつつありました。池大雅や富岡鉄斎の生気ある絵に新味を見出し、彼らが学んだ明清絵画の研究にも打ち込みました。さらにこの時期の作品には、同時代の西洋絵画の影響もうかがえます。この章では、老成をも感じさせる晩年の紫紅の画境の深まりを探ります。
定番グッズからトレンドアイテム、老舗とのコラボまで、幅広いラインナップで紫紅の世界に浸ってみませんか
紫紅の作品に登場する、幸運の鳥「ウソ」と鞠(まり)を抱いた鞠の精の「さる」のふわもこチャームや、老舗菓子店《塩瀬総本家》とコラボした、展覧会限定パッケージの蒸し饅頭と最中が登場します。
お土産にもおすすめです。
ナビゲーターは、紫紅と同じく横浜市出身の向井理さん(俳優)
【向井さんコメント】
このたび、「没後110年 日本画の革命児 今村紫紅」の音声ガイドナビゲーターを務めさせていただきます、向井理です。
今回は私が生まれ育った横浜での開催にご縁を感じています。
また、横浜美術館は2011年のヨコハマトリエンナーレでも取材させていただきました。震災後の混乱していた時期に当時の総合ディレクターの方と対談させていただき感銘を受けたことを覚えています。
国内外の文化に触れる最前線であり続けてきた港町、横浜。紫紅を育んだこの街の空気感も感じながら、ぜひ紫紅の世界を存分に味わってください。
【プロフィール】
横浜市出身。2006年俳優デビュー以降、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(10年)等話題作に多数出演。
近年の出演作にドラマ『ライオンの隠れ家』(24年)、映画『パリピ孔明 THE MOVIE』(25年)、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』(22年)などがある。
会期中、きもの(和装)を着用して来場し、来館当日中に美術館公園口の「大しかく看板」前で撮影した写真を、XまたはInstagramにハッシュタグ「#きものでいこう_しこう」と「#今村紫紅展」を付けて投稿いただいた方に、オリジナルポストカードを1枚プレゼントいたします。ぜひお気に入りの一枚を撮影して、SNSでシェアしてください!
展覧会図録
『没後110年 日本画の革命児 今村紫紅』 株式会社トゥーヴァージンズ、2026年
35年の生涯を力強く駆け抜けた今村紫紅の創作の軌跡を、初公開作品を数多く含む約200点と共にたどる、資料や学芸員による解説も充実の1冊。