1950年代、日本美再発見
日米の血を受け継ぎ、洋の東西を越えた世界的視野から芸術を再び人々の生活の中に根付かせようとした彫刻家イサム・ノグチ(1904-1988)と、画家として戦前日本の抽象美術をリードする一方、理論家として西洋近代美術の潮流と古い日本の芸術文化に通じ、両者の共通項を抽象芸術に見出した長谷川三郎(1906-1957)。1950年5月、19年ぶりに日本の土を踏んだノグチと、かねてより彼の作品に注目し、文通をも企図して対話を待ちわびていた長谷川は運命的に出会い、芸術家としての互いの関心事とビジョンが驚くほどよく似ていることを知り強く共鳴します。
爾来ふたりは固い友情で結ばれ、長谷川はノグチにとって建築、庭園、書、絵画、考古遺物、茶道、禅、俳句など、有形無形の日本の古い文化遺産への無二の案内役となり、ノグチが日本の美の本質を理解する上で重要な役割を果たしました。一方、ノグチは対話を通して長谷川の制作意欲を奮い立たせ、長谷川が墨や拓本、木版を用いてそれまでにない創作の地平を切り開くきっかけを与えました。
本展は、このふたりの芸術家の交友に焦点を当て、彼らが何を見、何を考え、何を目指したのかを、ふたりが共に歩んだ1950年代を中心に、ノグチ作品約50点、長谷川作品約70点を通して明らかにしようとするものです。
* 会期中、一部作品の展示替えがあります。
展覧会図録
『イサム・ノグチと長谷川三郎—変わるものと変わらざるもの』 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum, New York/University of California Press, Oakland、2019年
『イサム・ノグチと長谷川三郎—変わるものと変わらざるもの 横浜美術館出品目録』 横浜美術館、2019年