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戸田沙也加《沈黙と花》2025年 発色現像方式印画 作家蔵

アーティストとひらく

戸田沙也加展 沈黙と花

概要

戦後80年を迎える2025年、横浜美術館では、アーティスト戸田沙也加(とだ・さやか、1988年生まれ)とともに、今なお私たちにとって大きな課題であり続ける争いや共生の可能性について考える小企画展を開催します。
1945年の夏、原爆投下により焦土と化した広島は、「今後75年間は草木が生えない」と言われました。しかし、それから約1ヶ月後の9月、爆心地から約800m離れた場所でカンナの花がひっそりと咲く姿が見つかります。
カンナは、真夏の炎天下に大きな葉の間から鮮やかな花を咲かせる、中南米原産の花です。当時、朝日新聞のカメラマンであった松本栄一は、このカンナの花を広島で撮影します。この写真は戦後、広島平和記念資料館において希望のシンボルとして語られるようになりました。
戸田沙也加は、画家としてキャリアをスタートさせますが、ここ数年は写真や映像インスタレーションなどの技法を使い、その世界観を表現しています。戸田は、コロナ禍の2021年より、カンナの花と、ロシアから日本に移住した友人をモチーフに作品を制作してきました。このふたつのモチーフは、作家がいまの日本で「平和」や「異なる地から海を越えてこの島国に根付き自生するもの」を考えるきっかけになりました。作家は次のように記します。

東京の街並みをカンナの花と共に歩き、絶えず移り変わる景色に力強く咲き誇るカンナを忍ばせ記録する。終わりのない悲しみや、叫び、絶望に耳を傾け、愛する友人を想いながら、私なりの平和を願うささやかなデモを行う。

2025年現在、世界は冷戦やコロナ禍を経て、新たな対立、紛争に直面しています。本展で戸田は、横浜美術館コレクションの中から、二人の画家の作品に着目しました。ひとりは、北海道に生まれ、戦前に東京で美術文化協会に参加した後、戦地へと招集された画家、小川原脩です。もうひとりは、カタルーニャに生まれ、第一次世界大戦、スペイン内戦、第二次世界大戦と、多くの戦争を目の当たりにした画家ジョアン・ミロです。戦争に翻弄されながらも、それぞれの立場と姿勢を貫き作品を作り続けた二人の画家に対する思いをもとに、戸田はこの展覧会で、カンナの花と、ロシア人の友人を再びモチーフにした新作を発表します。
この展覧会は、同時開催のコレクション展「平和であることへの、控えめななにごとかを」と連動するかたちで、コレクション展の1室(ギャラリー5)で開催します。

戸田沙也加《Tokyo Canna Project #1》2023年 発色現像方式印画 作家蔵

戸田沙也加《沈黙と花 #2》2025年 発色現像方式印画 作家蔵

小川原脩《双生児対話》1940年 油彩、カンヴァス 横浜美術館蔵

「アーティストとひらく」とは

横浜美術館では、将来活躍が期待される若手アーティストを紹介する小企画展「New Artist Picks(通称NAP)」を2007年から2023年まで継続して開催してきました。
「アーティストとひらく」は、このプログラムを引き継ぐもので、新進アーティストと一緒に、これからの美術、これからの美術館の可能性について考え、試行錯誤をする場として実施される年1回のプログラムです。
リニューアル後の横浜美術館は、「多様性」をキーワードのひとつに掲げ、それに対する横浜ならではの応答を目指して、再出発しました。このプログラムは、この理念に基づき、新進アーティストとコレクション作品のコラボレーションや、横浜のグローバル/ローカルな歴史の探求などを行うプログラムとして、2025年から始まります。
19世紀から現在に至る国内外の多様な作品を主なコレクションとする当館の特色を生かし、アーティストと美術館の協働を通して、既存の文脈や歴史にとらわれない視点、今という時代に向き合うアーティストの思想や価値観を発信していきます。

基本情報

会期
2025年6月28日(土)~11月3日(月・祝)
会場
ギャラリー5
開館時間
10時~18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日
木曜日
主催
横浜美術館
助成
公益財団法人 野村財団

観覧料

一般
500(400)円
大学生
300(240)円
高校・中学生
100(80)円
小学生以下
無料

( )内は有料20名以上の団体料金(要事前予約)

※毎週土曜日は、高校生以下無料

※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料

※本展はコレクション展のチケットでご覧いただけます。

※「佐藤雅彦展」ご観覧当日に限り、「佐藤雅彦展」の観覧券で「コレクション展」、「アーティストとひらく」もご覧いただけます。
コレクション展(じゆうエリア)は観覧無料

作家略歴

1988年 埼玉県生まれ
2012年 女子美術大学大学院美術専攻洋画研究領域修了
現在、茨城、東京を拠点に活動

【主な個展】
2024年 「TOKAS Emerging 2024 消えゆくものたちの言葉なき声」TOKAS本郷、東京
       「東京にカンナの花を添える」KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京
2025年 「Voice of Silence」京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスク、京都

【主なグループ展】
2020年 「ソノ アイダ #COVID-19」オンライン展示
2023年 「境界の肌理」Gallery Cafe ULTRA、広島
2025年 「Deconstructive Decoration(脱構築的装飾)」アートかビーフンか白厨、東京

【受賞】
2010年 「シェル美術賞展」入選
      「アートアワードトーキョー丸の内2010」木幡和枝賞

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