横浜美術館リニューアルオープン記念展
2025年2月に全館オープンした横浜美術館では、「横浜」をキーワードに、美術館のコレクションに立ち返る展覧会を開催中。
おなじみの名作に加え、各所から作品をお借りし、アーティストにも新作を依頼します。テーマは「多様性」。開港前に生きた人びと、女性、子ども、さまざまなルーツを持つ人びとなどに注目します。すると、よく知っているはずの作品にもびっくりするほどたくさんの発見があることがわかります。また、子どもがゆっくりと作品に向き合える「子どもの目でみるコーナー」もあります。
「横浜」をキーワードに「多様性」という観点のもと、絵画、写真、工芸、映像などの作品や資料を通して、新たな視点で意外な横浜の歴史を深掘りします。
セザンヌ、ピカソ、マグリットや奈良美智など、近代美術の名作から現代美術の作品まで楽しむことができます。
子どものために作品を選び、見やすいよう工夫して展示する「子どもの目でみるコーナー」を会場内に設け、親子でお話ししながら鑑賞する機会をつくります。
第1章 みなとが、ひらく前
開港前は単なる漁村だった? いえいえ、横浜には古くからたくさんの人が暮らしてきました。
第2章 みなとを、ひらけ
1859年に開港した横浜。めずらしい風物は国内外の注目の的でした。
第3章 ひらけた、みなと
みやげものとして、また輸出向けに、たくさんの産業が生まれました。
第4章 こわれた、みなと
横浜生まれの画家たちは美術界で大活躍。そんなおり、関東大震災が横浜をおそいます。
第5章 また、こわれたみなと
戦争が近づく横浜。洋画家、松本竣介が市内の橋を描いたシリーズ《Y市の橋》は、横浜初のまとまったご紹介です。
第6章 あぶない、みなと
戦後の占領が長引き混乱する横浜。同時に独特の魅力で多くの日本映画の舞台となりました。
第7章 美術館が、ひらく
1989年、横浜美術館開館。この頃に収蔵した名作たちをたっぷりとご紹介します。
第8章 いよいよ、みなとがひらく
子どもと、私たち大人の中にいる子どものために、未来への希望を探ります。
特別展示 ピンクの正体
全館オープンにあわせてつくられた、やさしいピンク色のイスやテーブル、サインたち。そこに込められた思いをご紹介します。
本展では新しい船出となるこの機会に、当館コレクションの名作の数々を新たな視点で紹介します。加えて、横浜市歴史博物館、横浜開港資料館、横浜都市発展記念館、横浜市民ギャラリーなど、主に市内の施設が所蔵する、コレクションへのまなざしを豊かにしてくれる作品や資料も展示します。また、本展のためにアーティストに委嘱した新作をグランドギャラリーで披露します。
作品を読み解くための鍵は「横浜」、そしてリニューアル後の当館の活動理念の柱である「多様性」です。今回は「多様性」という観点のもと、横浜にまつわる作品の中でこれまであまり注目されることのなかった存在―開港以前の横浜に暮らした人びと、女性、子ども、さまざまなルーツを持つ人びとなど―にあらためて光をあてます。これにより、おなじみの作品や横浜の歴史にたくさんの新しい発見をもたらします。こうしてローカルの歴史を深掘りすると、世界の歴史もきっと違って見えてきます。
会場内には、子どもも一緒に楽しめる「子どもの目でみるコーナー」を設けます。また、当館の活動の柱のひとつである教育普及事業も開催します。
タイトルには、「3年ぶりに横浜美術館が帰ってきた」という意味と、「異なる時代にいろいろな地域からやってきて横浜に暮らした(あるいは現在暮らす)さまざまな人たちを、あらためて『おかえり』と言って迎え入れたい」という希望が込められています。
蔵屋美香
横浜美術館館長、おかえり、ヨコハマ展企画
展覧会図録
『横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ』 torch press、2025年