2025年2月8日(土)-6月2日(月)
横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」とともに、3階展示室で開催するコレクション展では、ふたつのテーマに基づき、休館中に収蔵した作品を紹介します。
ひとつめは、横浜にゆかりのあるアーティスト、淺井裕介(あさい・ゆうすけ、1981年生まれ)による新作《八百万の森へ》です。この作品は、横浜信用金庫が創立100周年記念事業として、2023年に横浜市文化基金に寄附を行ったことをきっかけに収蔵されたものです。
淺井は、土や水、マスキングテープやペンなどの生活に身近な素材を使い、動物や植物、山川や草木に宿る精霊のような存在を描くアーティストです。また、日本および世界各地で採集した土を絵具にし、それを使って各地の人と協働制作をすることでも知られています。
本作では、横浜信用金庫の各支店・拠点やボランティアによって集められた横浜市内の土が使われており、作品制作も、横浜信用金庫の3つの支店(鶴ヶ峰支店、本店営業部、市場支店)および新高島駅にあるBankARTStationなど、横浜市内で行われました。サイズの異なる9枚のパネルを組み合わせることで生まれる、高さ約3メートルの大作をお楽しみください。
ふたつめは、1980年以降の現代アートです。横浜美術館は、19世紀から現在にいたる美術作品を収集しています。現代アートの収蔵にあたっては、すでにあるコレクションとの関係を考慮し、当館ならではの視点で「今という時代」を語ることのできる作品を集めています。
今回は、こうした観点から休館中に収蔵された、1980年代と2010年代の作品を中心に紹介します。1980年代、日本では好景気を背景に現代アートの多様化が進みました。この時代に登場したのが、身の回りの出来事や身体をテーマに制作をする女性アーティスト、手仕事的な創作や性差の問題に取り組む男性アーティストです。彼らが提起したジェンダーの問題や日常から世界を見つめる視点は、2010年代以降の現代アートにも引き継がれ、今に至っています。
本展を皮切りに、横浜美術館では、休館中に収蔵した作品に焦点をあて、さまざまな切り口からコレクションの魅力を紹介していきます。
淺井裕介、石原友明、岩崎貴宏、スプツニ子!、辰野登恵子、椿昇、ヘルナン・バス、クリス・ヒュン・シンカン、平林薫、福田美蘭、松井智恵、森村泰昌、吉澤美香
*50音順
・淺井裕介が「横浜」のために制作した新作!
淺井裕介による作品《八百万の森へ》は、2024年7月5日~7日の3日間限定で、無料で特別展示を行いました。9枚のパネルを組み合わせることで生まれる本作は、淺井が指定した7パターンを基本に絵柄を変化させていくことができます。本展では、7月とは異なる絵柄の作品をご覧いただけるとともに、作品の完成までを記録した資料や映像も新しく展示します。
・休館中に収集された現代アート!
3年間にわたる休館の間、横浜美術館は様々な作品を収蔵する機会に恵まれました。本展はその中から、1980年代と2010年代の現代アートを中心にご紹介します。1980年代には、男性が中心だった美術界の価値観を覆す女性アーティストが数多く登場しました。また、男性アーティストの間でも、身体や手仕事的な創作などを扱う作品が目を引くようになります。ジェンダーに対する問いかけや環境問題などを取りあげる2010年代の作品とともに、現在に繋がるテーマが提示された1980年代の現代アートをご覧ください。