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New Artist Picks

柵瀨茉莉子展|いのちを縫う

概要

将来活躍が期待される若手作家を紹介する小企画展「New Artist Picks(NAP)」。今回は作家、柵瀨茉莉子(さくらい・まりこ/1987年生まれ)の個展を開催します。 柵瀨は一貫して「縫う」ことを表現手段とし、主に木片や木の葉、花びらといった自然物を素材に制作してきました。それはひと針ずつ素材を縫うという手作業を通して、自然物に刻み込まれた時の記憶を辿り、その記憶を目に見える形で留める行為と言えます。
本展では、これまでの作品の展開を追うとともに、生まれ育った佐島(神奈川県横須賀市)を舞台とした作家の個人史をテーマに新作を発表します。それらは、刺繍を教えてくれた亡き祖母への思い出や、自然豊かな土地の開発に対する違和感など、作家の個人的な記憶に由来するものです。一見私的な表現にも見えるこれらの作品には、いのちある全てのものへと注がれた作家のあたたかな眼差しと、やがては朽ちてゆく生命の儚さに寄せた普遍的な共感が満ち溢れています。柵瀨にとって縫うこととは、生きるものと朽ちてゆくものへの祈りと鎮魂の思いを込めた所作であり、その思いを紡ぐ糸の縫い目が、道端に落ちていたら気にも留めないような素材に新たないのちを吹き込んでいます。
会期中にはCafé小倉山でも小展示を行うほか、アーティストトークとワークショップ「木の葉を縫う、持ち歩く」を開催いたします。若手作家のみずみずしい感性による作品を、ぜひこの機会にご覧ください。

作家メッセージ
山や海で遊ぶことが好きだった。ある日、遊び場だった山はどこまでも続く長いフェンスで区切られた。山の半分は「立ち入り禁止」の場所になった。山が裸にされ家が建つことへの怒りと悲しみがあったが、新住民のためにできたスーパーや、本数が増えたバスを利用する自身の都合の良さにあきれた。
生まれ育った横須賀市佐島は、三浦半島に近く相模湾に面した半農半漁のまち。山ではおばさんたちが野菜や花を育てる。幼い頃から母がいなかった私のお守をしてくれた“おばちゃん”。お墓に供える花を山の畑で育て、切り、束ねる。血の繋がりがないのに、私はいつもおばちゃんのそばにいた。
そして祖母。私にとって大きな存在。昨年1月10日(いとの日)に亡くなった。ずっと一緒にいてくれた母のような人。縫うことを教えてくれた。ものをつくり出す姿を日々私に見せてくれた。彼女は花を愛し、図案を描き、ひと針ひと針手で縫うことが好きだった。
私の中にある佐島での記憶が、今の自分の歩く方向を決めているように思う。30歳を過ぎた今、展覧会の機会に、一度立ち止まり、振り返る。心をぎゅっとにぎられるような気持ちになる海の夕暮れ、トビが鳴く声、暗くなると怖くて歩けなくなる山道。想いがつきないこの気持ちを縫うことに重ねたい。
柵瀨茉莉子

基本情報

会期
2020年11月14日(土)~12月13日(日)
* 変更前会期:2020年3月14日(土)~4月12日(日)
会場
横浜美術館アートギャラリー1、Café小倉山
主催
横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
協力
GALERIE PARIS、Café小倉山

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