神話とヌード
抽象と構成 ~工業化と都市のイメージ
無名都市 ~現代の写真に見る匿名の風景
コムデギャルソンの家具
大正・昭和の横浜から[期間限定展示:2015年11月3日~2016年1月11日]
横浜美術館2015年度コレクション展第3期は、4つのテーマにより構成します。
「神話とヌード」と題したパートでは、ヨーロッパと日本における多様なヌードの表現を、神話的主題との関係から紹介します。西洋美術における裸体表現は、古代ギリシア美術の理想的な身体を具現化した存在である神々や戦士にまで遡ることができます。とりわけ女性の裸体は、美を象徴する女神アフロディテ(ヴィーナス)の姿として制作されることが多くありました。ルネサンス以降は、長いあいだ神話的主題であることが、公の場で発表される女性のヌードの条件とされていました。こうした主題による表現の束縛は、近代以降、前衛的な芸術運動の開花と共に、より自由で多様なテーマと表現技法へと展開していくようになりました。展示を3つのセクションに分け、〈美の象徴としての神々〉では、古典的な神話画の伝統を受け継ぐ絵画や19世紀の絵画的写真を、〈変身・変化の象徴としての神々〉では、西洋のモダニスム絵画を、そして〈聖と俗〉では、日本画や現代の絵画をご覧いただきます。
「抽象と構成 ~工業化と都市のイメージ」では、20世紀初頭、工業化が進む社会の中で、急速に変化していく都市の風景や、機械や工業製品に向けられた芸術家たちの視線に焦点をあてていきます。前半部は〈構成主義と都市〉と題し、構成主義だけでなく、ダダやキュビスムなど、20世紀前半のヨーロッパにおける前衛的な芸術運動と合わせて、プラスティックやアルミ二ウムなど当時の新素材を用いた彫刻作品、絵画における抽象的構成への志向を示す作品などを展示します。後半部では〈集積するイメージ〉と題して、20世紀後半、工業的イメージが持つ記号的な側面に着目していったネオ・ダダや、マスメディアを通じて繰り返し登場する大衆文化や消費社会を象徴するイメージを素材としたポップ・アートなど、主にアメリカを拠点に活動した作家たちの作品を紹介します。
「無名都市 ~現代の写真に見る匿名の風景」では、現代の日本における写真と映像が描き出す匿名化する都市風景を、中平卓馬(なかひら・たくま)、清野賀子(せいの・よしこ)、米田知子の写真作品に、金氏徹平(かねうじ・てっぺい)の映像作品を加えて紹介します。ここでは併せて、世界を代表するファッション・ブランドであるコムデギャルソンが、中平卓馬や清野賀子の作品を店舗などで紹介してきたことに因み、コムデギャルソンがデザインした家具を同じ空間内で紹介します。
また、2015年11月3日~2016年1月11日に開催される「横浜発 おもしろい画家:中島清之―日本画の迷宮」展の会期中には、「大正・昭和の横浜から」という小企画も開催し、おおよそ100年前に横浜で撮影された貴重な記録映像と、当時の横浜で生産された宮川香山(みやがわ・こうざん)の眞葛焼(まくずやき)などの陶磁器を紹介します。
横浜美術館が誇る多彩な収蔵作品を紹介するコレクション展を、どうぞお楽しみください。