若手作家支援(若手人材育成)事業
このたび、横浜美術館の新進作家支援プログラムの一環として、中谷ミチコの個展を開催します。
中谷ミチコは、2005年に多摩美術大学を卒業後、ドイツ東部のドレスデンに渡りました。以後ドイツで制作・発表を重ね、2010年にはVOCA展で奨励賞を受賞するなど国内でも高い評価を得ています。本展は、5年間のドイツ滞在を終えて昨秋帰国した中谷の、日本での本格的な創作活動の第一歩となるものです。帰国直後より横浜の黄金町エリアマネジメントセンターのスタジオに入居し、新作に取り組んできました。
中谷は、作品の原型となる粘土や、自身にとって不可欠な質感を備えているという石膏を用い、「在る事とない事のあいだ」そして「自分のからだの内と外の境界」をテーマに、作品を制作しています。中谷の作品は、静謐で、内省的な性質の色濃いものです。しかし、その制作の原動力となっているのは、自分という実体の「すべて」を掴み取りたいという強い欲求と、それを決して掴むことはできないというジレンマです。半立体の原型を石膏取りすることによって、「浮彫」ならぬ「沈彫」とも呼べる凹のかたちに変換し、それを透明樹脂で充填して「平面」に封じ込める手法、また、壁への直接のドローイングによってイメージを増殖させる手法は、いずれも、中谷が自分の内と外の境界線を探るための行為なのです。横浜での滞在制作から生み出された中谷ミチコの新作に、ご期待ください。