横浜開港150周年記念・横浜美術館開館20周年記念
―徳川将軍家と幕末明治の美術―
横浜開港150周年に当たる本年は、横浜美術館にとっても開館20周年という節目の年になります。横浜美術館では、この記念すべき年に、「大・開港展―徳川将軍家と幕末明治の美術―」を開催します。
ペリーを司令長官とするアメリカ東インド艦隊が、嘉永7/安政元(1854)年横浜に来航して日米和親条約が締結され、安政5(1858)年にはアメリカなど5カ国と結んだ修好通商条約によって横浜をはじめとする5港が開港され、日本の鎖国体制は幕を閉じました。さらに大政奉還、王政復古の大号令、明治政府の成立と、わずか15年ほどで、日本は内政的にも外交的にも大きな転換をとげました。この政治的な激動は、芸術や文化にも多大な影響を及ぼしたのです。本展では、この開港にともなう政変の大きなうねりを背景にして、わが国の美術が、江戸時代から何を受け継ぎ、明治という近代国家体制の中で新たに何を生み出していったのかを明らかにします。
展覧会は3章で構成されます。第1章では、封建体制下における政治・文化の頂点に君臨した徳川将軍家に焦点を当て、幕末の将軍遺愛の品々や、大奥を彩った調度品などを通して幕末の美術の粋を紹介します。第2章では、開港によって揺れ動く時代相を、史料や絵画、版画、写真などを通して明らかにします。第3章では、明治政府の文化政策のもとで制作された美術品や工芸品などを展示し、開港を経て新しく生み出された美術について考察します。
本展を通し、芸術文化におけるパトロンの役割と意義、新しい美術表現の誕生とひろがり、文化政策の展開と美術の変容といった問題、さらには近代日本草創期の芸術文化の特質が、あらためて浮き彫りになるでしょう。
展覧会図録
『大・開港展 徳川将軍家と幕末明治の美術』 横浜美術館、2009年