李禹煥は、韓国や日本の伝統あるいは西洋の文化を深く学びとりながらも、そのいずれともつねに一定の距離をたもってきました。そうすることで、近代の美術がはらんできた問題点を見きわめ、創作を通して、いかにしてこれをのりこえるかということを活動の大きな課題としてきたのです。その課題へたち向かうために、決してでき合いの表現をたよりとせず、自らの表現の起源を問いつづけてきた李禹煥の姿勢は、高く評価されてよいでしょう。とくに、90年代以降の作品は、その構成が整理され、素材の選択がシンプルになり、李禹煥の問題意識がよりあざやかに読みとれるようになってきました。
この展覧会では、そうした90年代以降の作品に注目し、新作を含む絵画・彫刻、合計36点を紹介します。日本ではおよそ12年ぶりの大規模な個展となりますし、90年代以降の新作・近作で構成される大きな個展も日本では初めての試みです。
展覧会図録
『李禹煥 余白の芸術』 横浜美術館、2005年