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マルセル・デュシャンと20世紀美術

概要

この展覧会は、20世紀はじめの美術に大きな転機をもたらしたマルセル・デュシャン(1887-1968)の主要な作品75点と、デュシャンと向き合った世紀後半から現代までの芸術家34人による作品78点を対置し、美術とは何かを考える企画です。

美術作品とは、創造力と名人的技術と幸運に恵まれた人が作りあげた、絵画や彫刻などである、そのような通念を根底から揺さぶる挑戦を仕掛けた美術家がデュシャンです。彼は百貨店の商品を選んで美術展に出品することも、パレット上の絵の具を選んでキャンバスに置くことも同じことだと語りました。絵筆を捨てたデュシャンは、《泉》や《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》に代表される不可思議な装置を様々に具体化していきます。ものとしての作品だけでなく、構想過程を記したノート類を発表し、人々にその考え方を示そうともしました。それは見ることと考えることを同じ土俵に上げることで、美術を一握りの専門家の手から解放する試みであったといえます。誰もがアクセスできることを考えたデュシャンの作品は、濃厚なエロティシズムを漂わせ、時代の特徴である機会文明をユーモアと共に意識させます。画家の「テレピン中毒」を厳しく戒めた彼は、描くことに替えて、言葉遊びに興じ、次元間移動の概念に取り組み、偶然を尊重し、自らの女性分身に扮し、さらに無為を装うことさえできたのです。それらの挑戦は「美術とは何か」という問いを今も発し続けています。

この展覧会を構成するもうひとつの作品群は、第二次大戦後から現代にいたる作家たちによるものです。ポップ・アート、ネオ・ダダ、コンセプチュアル・アートなどの様々な潮流が、「美術」という小さな殻にデュシャンが開けた突破口から展開しました。マン・レイ、瀧口修造、ケージ、ウォーホル、篠原有司男、工藤哲巳、ハーケ、リヒターなど、日・米・欧の芸術家による様々なデュシャン・イメージを相互に、また元になった作品と比較することができます。デュシャンへの彼らの応答を考えながら、その肩越しに、デュシャンという鏡の中に、私たちも自身の美術イメージをのぞき込むことができるでしょう。

基本情報

会期
2005年1月5日(水)~3月21日(月・振替休日)
主催
横浜美術館(横浜市芸術文化振興財団)、朝日新聞社、神奈川新聞社、tvk(テレビ神奈川)
後援
横浜市、NHK横浜放送局
協賛
大日本印刷株式会社
協力
日本航空、京浜急行電鉄、相模鉄道、横浜情報ネットワーク、横浜ケーブルビジョン株式会社、FMヨコハマ

展覧会図録

 

『マルセル・デュシャンと20世紀美術』 朝日新聞社、2004年

 

  • ブラインド・マンの虚勢 デュシャン、スティーグリッツ、《泉》をめぐるスキャンダル再考(抄)/マイケル・R・テイラー(フィラデルフィア美術館ザ・ミュリエル・アンド・フィリップ・バーマン・キュレーター・オブ・モダン・アート)
  • デュシャンのミュンヘン滞在/河合 哲夫(朝日新聞社文化事業部)
  • ノートのマルセル・デュシャン、蝶番(ちょうつがい)の思策者/北山 研二(成城大学教授)
  • 鏡の送り返し—デュシャン以降の芸術/平芳 幸造(国立国際美術館主任研究官)

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