この展覧会は、ロダンから20世紀半ばまでの西洋近代彫刻の歴史を、32人の作家と約130点の作品によって概観するものです。
この時代には、旧来の閉じられた輪郭と量塊をもつ古典的な人体像や、文学的テクストを図解するための、正面性を前提にした遠近法的空間表現、つまりヴァーチャルなスペース表現に代わって、観者と同じ現実の時間と空間を共有するリアルなものとしての彫刻が作られるようになります。それはブランクーシの直彫りやロダンの塑像など、芸術家が直接素材と取り組むことから始まり、ピカソ、アーキペンコ、ボッチョーニ、タトリンらによって、リアルスペースとマルチマテリアルの考えが生じ、ベニヤ板や金属、日用品などが彫刻の素材となり、虚空さえも量塊と同等の造形価値をもつ素材として認識されます。また一方で、生命の力や人間精神の原型といった、普遍的なイデアを可視化する潮流も生まれてきます。本展ではそれらをオブジェと定義し、その展開と意義を次の7つの指標で考察します。
第一章 粘土と蝋から生まれたオブジェ
第二章 絵画から生まれたオブジェ
第三章 空間と構成によるオブジェ
第四章 脱人格のオブジェ
第五章 あなたによく似たオブジェ
第六章 生命のイメージとしてのオブジェ
第七章 オブジェと世界観
展覧会図録
『近代彫刻—オブジェの時代展』 横浜美術館、2001年