この展覧会は、ゲスト・キュレーター(客員学芸員)にアメリカのアレキサンドラ・モンロー氏を迎え、同氏による戦後日本の前衛美術について綿密な調査にもとづいて企画、構成されたものです。
前衛的な美術のメッカであるアメリカの影響を色濃く受けた戦後の日本の前衛美術は、一方でそれ自身独自な世界も形成してきました。本展は、戦後の主要な前衛的な美術運動、あるいはそれぞれの時代の思潮を色濃く反映した作品などを9つのセクション、すなわち、Ⅰ.真夏の太陽にいどむ:具体美術協会、Ⅱ.環:モダニズムと伝統、Ⅲ.復讐の形態学:読売アンデパンダンと1960年代の社会的プロテスト、Ⅳ.肉体の叛乱:舞踏とオブセッショナル・アート、Ⅴ.微笑の箱:フルクサスとコンセプチュアル・アート(概念芸術)、Ⅵ.状況律:もの派と彫刻的パラダイムを越えて、Ⅶ.無限の網:日本の現代抽象絵画、Ⅷ.鎖陰:実験映画とビデオ、Ⅸ.ヒノマル・イルミネーション:1990年代の日本のアート、に分け、それらを歴史的にたどりながら、ともすれば海外の美術動向の模倣にすぎないといった評価を受けがちな日本の前衛美術の独自性を示そうとするものです。
白髪一雄、イサム・ノグチ、篠田桃紅、草間彌生、李禹煥、高松次郎、中村一美、中西夏之、久保田成子、杉本博司、森村泰昌、中原浩大、辰野登恵子、ダム・タイプ、遠藤利克、といった様々な世代の作家をはじめとする100数名の作家200点余りの幅広い表現を示す作品から構成され、かつてない規模のこの展覧会は、戦後の日本の前衛美術の流れを概観する上で絶好の機会となるでしょう。
展覧会図録
『戦後日本の前衛美術』 読売新聞社、1994年