ベルリン市街の南西部ダーレムには、プロイセン文化財団が所管する「国立博物館群」があります。プロシア王家によって設立された王立プロイセン美術館群をその前身とし、ヨーロッパ美術はもとより世界各地の文化遺産を網羅する巨大な博物館として世界的に知られています。
今回紹介します東洋美術館は、この博物館群の一つとして設立されたもので、その歴史は約100年に及びます。今世紀に入ると、ドイツにおいても、東洋美術がヨーロッパ美術に比肩しうる優れた文化であるという認識が芽生えてきました。こうした考えから、1906年(明治39)、王立プロイセン美術館群の独立した部門として「東洋美術コレクション」が設立されました。その担当責任者となった東洋研究の先覚者キュンメル博士は、当時ドイツ大使館の学術専門家として東京にあったグローセ博士の協力のもと、このコレクションの基礎を築いたことで知られます。また1931(昭和6)には、ベルリンのプロイセン美術アカデミーで「伯林日本画展覧会」が開催され、横山大観や鏑木清方といった近代日本画の巨匠が作品を出品し、後にその中から11点が寄贈されました。
本展は、第二次世界大戦の壊滅的な被害を奇跡的に免れたこれら東洋美術コレクションの中から、その粋を精選して紹介するものです。中国の考古遺物から明・清の絵画、日本の近世及び近代の絵画など、長大な歴史の流れの中で生み出された中国・日本美術の名品180余点を展示します。
展覧会図録
『ベルリン東洋美術館名品展』 ホワイトPR、1991年