大地と人と建築
フランク・ロイド・ライト(1867-1959)は、アメリカが生んだ近代建築の巨匠の一人であり、日本では旧帝国ホテル(1923年)や自由学園(1921年)等の設計者として知られています。92年の長い生涯の間、ライトは、計画案を含め800余にのぼる設計を手掛け、ヨーロッパの影響から脱したアメリカ独自の建築の確立に努力しました。自然と建物の調和を重視したその「有機的建築」は、ミース・ファン・デル・ローエらに代表される国際様式とは一線を画すものとされています。この独自の建築空間を実現するために、ライトは、家具、照明、食器、壁紙と言った住空間すべてを自らの意匠によって統一し、デザイナーとしても卓抜な手腕を発揮しました。
このたびのわが国初の本格的な回顧展は、こうした建築家ライトの全貌を明らかにすべく、初期から晩年に至る各時代の主要作品によって構成されています。 1937年に設計されたカウフマン事務所のインテリアのオリジナル・ピースの再現をはじめ、本国アメリカ以外でライトの最も多彩な活躍の地となった日本における様々なプロジェクトも併せて紹介します。
モダニズムの再考が進む今日、近代主義建築とは別種の展開を見せた建築家ライトの軌跡を辿り直すことは、まことに時宜にかなった意義深いものであります。本展は、建築家ライトが20世紀建築に印した足跡を改めて問い、その業績に新たな光を当てるまたとない機会となるでしょう。
展覧会図録
『フランク・ロイド・ライト回顧展』 毎日新聞社、1991年