―日常の中の象徴性―
世界のアジアへの関心は、激動する政治情勢やめざましい経済の発展、さらには文明や宗教のふるさとにとどまらず、近年、現代の美術にも熱い視線が注がれ始めました。西欧中心のこれまでの美術観にはない、ほんとうに新しく、ほんとうに独自なものが、そこから生まれるのではないか、人々はそう感じ始めたのです。
「第3回アジア美術展」は、1979年以来、福岡市美術館で開催されてきた現代アジア美術展の第3弾にあたり、横浜市政100周年、開港130周年の記念すべき平成元年の本年は、新たにモンゴルとブルネイが加わり、ほぼアジア全域に及ぶ15ヶ国からの参加を得た意義深い展観となりました。活発な創作活動を展開する優れた中堅・若手作家を中心に「新しいアジアの美術」を概観するもので、開港以来、わが国の海外交流の先導的役割を果たしてきた横浜の歴史的背景を踏まえ、近隣アジア諸国の美術を積極的に紹介し、国際交流活動の実を挙げようとするものです。 本展では、“日常のなかの象徴性”というテーマを設定し、これまでよりも焦点をしぼってアジア美術の独自性を探っています。アジアの日常に豊かに生きる多様なシンボルは、アジアの現代美術にも反映し、そこに新たな生命を与えています。こうした表現は、アジア美術の魅力の共通した特質であると同時に、各国において多彩な展開もみせています。テーマのもとに厳選された作家104人による、153点の充実した作品は、必ずやこれまでのアジア美術観を一新してくれるにちがいありません。
展覧会図録
『第3回アジア美術展』 福岡市美術館、1989年