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現代の写真Ⅰ 「失われた風景―幻想と現実の境界」

展覧会概要

本展は、同時代の写真の動向を特定のテーマによって概観し、写真表現の一つの様相を浮き彫りにしようとする第1回の試みである。19世紀の前半に写真が登場して以来、写真は様々な風景を映し出してきた。それは、絵画の伝統を踏まえたいわゆる風景写真に始まって、文明の進化とともに変貌する都市風景、あるいは様々な文化を背景とした人々の生活風景まで極めて幅広いものである。ここでは、そうした写真における風景の歴史的展開を念頭に入れつつも、80年代から現代にかけての様々なスタイルの風景写真に焦点を当て、とりわけ東西冷戦構造の崩壊(ベルリンの壁崩壊)にともなって拠り所を喪失した世代を代表する作家それぞれ自身にとっての日常生活における、掛け替えのない、そして唯一絶対的な風景をとりあげる。ここでは、現実の風景もあれば、いわゆる演出された風景もあり、そうした風景を同時にとりあげることで、現実と現実の中の白昼夢=幻想の間に見いだすべき我々の存在観といったものを作品を通じて概観しようとするものである。写真家は、撮影する対象と自分自身の距離間において特定の関係性を作品として表現しようとする。とりわけ現代の写真においては、作品の対象が、かならずしも現実に起きた事件でなければならない必要がないばかりか、もはや「真実の写真」というものの重要性が希薄となりつつあり、言わば、現実と虚構のあやふやな境界において、はじめて写真というイメージが成立する傾向を示している。したがって、それらの風景とは、美術史においていうところの風景描写ではなく、人物像や日常的な身のまわりに存在する風景といったものまで含むものである。本展において、それぞれの写真が持つ様々な風景の世界観が、同時代の我々の求めようとしている世界観と何らかの接点をもつことになれば幸いである。

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