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コレクションの特徴

横浜美術館では、横浜が開港した19世紀後半から現代にかけての作品を幅広く所蔵しています。横浜にゆかりの深い作家の作品や、ダリ、ピカソ、マグリットをはじめとする世界的に評価の高い作家の作品など、関連資料も含め、その数は14,000点を超えます。(2024年3月現在)

横浜市が掲げる横浜美術館の収集方針に基づきながら、国内外の美術の新しい潮流や社会の動きにも目を配り、多様で魅力的なコレクションが形づくられてきました。
いくつかの具体的な特徴を見ていきましょう。

※展示されるコレクション作品は、展覧会によって異なります。

1. 横浜ゆかりの作家やコレクター

横浜を代表する名園・三溪園をつくった実業家・原三溪は、古美術のコレクターであり、横浜生まれの思想家・岡倉天心を師と仰ぐ同時代の芸術家を支援したことでも知られています。横浜美術館では、横山大観、菱田春草、今村紫紅など、天心の薫陶と、三溪の支援を受けた作家の作品を積極的に収集しています。特に、三溪の庇護のもと横浜に居を構えた下村観山については、作品、資料ともに世界随一のコレクションといえるでしょう。
また、「サカタのタネ」の創業者・坂田武雄氏が昭和初期より収集したギュスターヴ・モローに代表されるフランスの近代美術の寄贈作品や、開港から明治期に海外へと輸出された「眞葛焼」の研究者で実業家・田邊哲人氏のコレクション寄託など、地域の篤志家の方々からのご支援は、美術館の収集活動をさらに豊かにしています。

2. ダダ・シュルレアリスムに代表される欧米の美術

横浜美術館といえば、マグリットの印象的な絵画や、ダリの巨大な三連装飾画など、シュルレアリスムの作品を思い浮かべる方も多いのではないしょうか。
西洋絵画コレクションの核は、開館前に、新潟にかつてあった長岡現代美術館の所蔵作品の一部を継承するかたちで築かれました。なかには、マグリット、カンディンスキー、デルヴォーなどが含まれていました。
その後、ブランクーシ、セザンヌ、ピカソなどの彫刻・絵画を収集しながら、次第に両大戦間の美術を充実させ、特にダダ・シュルレアリスムの作品に重点を置いたコレクションが形づくられました。絵画にとどまらず、写真・立体・版画・素描などのさまざまな表現や、日本国内でシュルレアリスム運動に関わった作家の作品にも視野を広げていきました。

3. 開港期から現代までの充実した写真コレクション

港町の横浜へは、外国の写真技術が海を渡り、いち早く伝わりました。日本で最初の商業写真館が開かれるなど、幕末以降の写真興隆期の一大拠点として発展してきたことにちなみ、横浜美術館では開館当初より写真コレクションの充実を図ってきました。日本の美術館で初めて、写真専用の展示室を設けたのも横浜美術館です。
開港期の様子を時に手彩色をつけて記録した風俗・風景写真や写真アルバムは、写真史のうえでも貴重なものです。シュルレアリスムの作家たち、ブレッソン、キャパなどの20世紀の海外の巨匠から、木村伊兵衛、土門拳、常盤とよ子、中平卓馬、石内都など国内のアーティストまで、4,000点を超える作品群は、コレクションの柱のひとつとなっています。
「写真史」の枠組みのみでなく「美術表現」として写真・映像を位置づける視点は、展示においても常に意識され、文化や社会に対するメッセージを発信してきました。

4. さまざまな文化のルーツをもつ作家たち

横浜に生まれ、パリで活躍した版画家・長谷川潔は、日本の伝統に根ざした自然観と西洋の伝統的な技法を融合させました。当館は開館前から作品収集を始め、愛用の道具などの資料も含めて1,800点を超えるコレクションを築いています。
海外から日本を訪れ、その生活や文化に慣れ親しみながら木版画の絵師として活躍したポール・ジャクレーやヘレン・ハイドなど、訪日外国人画家や版画家の作品も数多く所蔵しています。
また、日系アメリカ人のイサム・ノグチは、生涯を通じて世界を旅し、彫刻、庭園、家具、建築、舞台美術など多岐にわたる活動を展開。当館ではその多彩さを示すような種々の素材と技法による彫刻6点を収蔵しています。
さまざまな文化のルーツや足跡をもつ作家たちの作品は、多様なまなざしをもって世界のあり方や生き方を考える上で幅広い示唆を与えてくれます。当館の近年の収集活動でも、多様性は大切な観点と考えています。

5. 同時代の作家へのまなざし

横浜美術館は開館以来、近代美術の研究・収集とともにその先につながる同時代の作家への視点も大切にしてきました。
奈良美智は、2001年に国内の公立美術館では初となる個展を横浜美術館で開催。2012年の2度目の個展で発表した重要な作品が当館のコレクションとなりました。ほかにも、斎藤義重、森村泰昌、菅木志雄、石田尚志、束芋など、展覧会を契機として収集が実現しました。また、岩崎貴宏やクリスチャン・ヤンコフスキー、風間サチコなど、2011年より横浜美術館が主会場となった、現代美術の国際展「横浜トリエンナーレ」の出品作の収集にも努めています。
展覧会出品作だけではなく、共に教師をしながら若手作家の実験的作品を集めてきた上田國昭氏・克子氏による200点ちかくの「『賛美小舎』コレクション」のご寄贈をはじめ、同時代の作家に目を向ける個人コレクターからのご支援によってもまた、コレクションの幅と奥行きは広がっています。

新しくなった横浜美術館へようこそ新しくなった横浜美術館へようこそ

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