この展覧会は、社会に強いインパクトを与えている「アイドル」をテーマに取り上げています。出品作家たちはみな「アイドル」のもつパワーを、作品作りに活かしている第一線のクリエーターたち。みなさんよくご存じのアイドルも登場しますが、空想の世界にのみ存在する「アイドル的なるもの」を表現したものもあり、絵画、写真、マンガ、映像、ダンス、ゲームなど、多様なジャンルから構成されます。
アイドルは、崇拝、憧れ、羨望、嫉妬など、私たちの感情の起伏や陰影を受け止め、写し出す鏡のようなもの。手のとどかない遠い存在でありながら、マス・メディアを通じて眼前にありありと出現する、親しみやすいものでもある。アイドルはあくまで一時的な現象、はかない夢のなかの住人ですが、時には家族や友人、恋人の代理物にもなりえます。この展覧会を通じて、誰もが知っている有名人や、親しみやすいキャラクターが、現代の日本社会のなかでどのような役割を演じているのか、そして私たち自身がどのような思いをアイドルに託しているのかを、考えてみるきっかけになればうれしいです。
展覧会図録
『アイドル!』 横浜美術館、2006年