レオナルド・ダ・ヴィンチ《白貂を抱く貴婦人》
古都クラクフにあるチャルトリスキ美術館は、1801年にイザベラ・チャルトリスカ公爵夫人によって創設された、ポーランド最古の美術館です。チャルトリスキ・コレクションには、古代から近代にいたるヨーロッパおよびアジアの優れた美術品が収蔵されており、中でも白眉として知られるのが、《モナ・リザ》と並び称されるレオナルド・ダ・ヴィンチの《白貂を抱く貴婦人》(1490年頃)です。この肖像画は、たぐい稀な美貌と知性でミラノ公ルドヴィコ・イル・モーロの寵愛を受け、また宮廷のミューズと讃えられた女性、チェチリア・ガッレラーニを寓意的に描いたものといわれています。
本展は、その《白貂を抱く貴婦人》を核にして、ルネサンス時代を中心とするヨーロッパの絵画、工芸、版画などの優品109点を厳選し、チャルトリスキ・コレクションを日本で初めて紹介するものです。現存するレオナルド・ダ・ヴィンチの油彩画は数少なく、重要性と保存上の理由から、それらが展覧会に貸し出されることは極めて稀であり、本展は、レオナルドの絵画芸術を日本国内で間近に鑑賞できる貴重な機会です。また、出品作品の中には、日本では紹介されることの少ない、板絵、七宝工芸、タペストリー、彩飾写本なども含まれています。さらには、独自の文化が開花した17-18世紀ポーランドの絵画や工芸品、ショパンなど19世紀ポーランドの芸術家に関連する作品も展示され、日頃なじみの薄いポーランドの文化や美術への理解を深める好機となるでしょう。
展覧会図録
『レオナルド・ダ・ヴィンチ《白貂を抱く貴婦人》チャルトリスキ・コレクション展』 株式会社ブレーントラスト、2001年