斎藤義重(1904年生まれ)は、横浜市在住の造形作家です。戦前の日本の前衛美術運動の奔流の中で、いち早く構成的・抽象的な作風を確立しました。戦後、その活動が広く認められるようになり、わが国の代表的な現代造形作家の一人として、世界的な名声を獲得しています。
本展のねらいは、タイトルに「斎藤義重による斎藤義重展」とあるように、作家の個性が会場全体から肌で感じられる、生き生きした一人舞台を展開することにあります。構想段階から会場全体を一つの作品として捉え、そのために必要な自作を作家本人が選択し、新たに制作されたものと併せて自ら会場に配置し、空間を構成します。これは、作品の選定から展示方法、カタログにおけるモノローグにいたるまで、そのすべてを作家の芸術的な「表現」としてとらえた新しい試みです。過去数ヶ月間、50分の1の模型を前にして行われた綿密なシミュレーションや、作家自らが指揮する本番展示の模様はヴィデオに収録され、会場で上映されます。また、関連事業として作家が青年期に感銘を受けた映画の上映も行います。
90歳を前にして益々研ぎ澄まされた斎藤義重の知性と旺盛な創作意欲がフルに展開された、アクティブな展示空間をご覧いただきます。
展覧会図録
『斎藤義重による斎藤義重展 時空の木 —Time・Space, Wood—』 朝日新聞社、1993年