【特集展示】下岡蓮杖と幕末明治の写真
Shimooka Renjo and the Photographs in Japan from 1850s to 1890s
日本写真草創期の写真師・下岡蓮杖(しもおか・れんじょう)が横浜の地に写真館を開業して、ちょうど150年が経ちます。ここでは、今年1月から3月にかけて市内各所で開催中の「PHOTO YOKOHAMA 2012」に連携して、当館コレクションの中から、蓮杖が活躍した幕末から明治期にかけての写真を特集展示します。
最古の写真技法であるダゲレオタイプ(銀板写真)が日本に伝わったのは1848年(嘉永元)でした。その後1853年(嘉永6)のペリー来航を契機に、写真メディアは本格的に日本国内に普及していきます。開港の地・横浜における写真普及の担い手となったのは、開国とともに来日した外国人写真師たちでした。ヴェネツィア生まれのイギリス人写真師フェリーチェ・ベアトはその代表格です。1863年(文久3)に来日し、翌年に横浜で画家ワーグマンとともに写真と複製絵画の販売会社を設立したベアトは、国内の都市、名所、街道などの風景写真や風俗写真を数多く手がけました。ベアトが他のビジネスに転業すると、そのネガや機材はオーストリア人のフォン・シュティルフリートが引き継ぎました。
一方、ベアトに先んじて1860年(万延元)から横浜を拠点にアマチュア写真師として活動していたアメリカ人のジョン・ウィルソンに写真術を学んだ下岡蓮杖は、師の離日に際して写真機を譲り受け、1862年(文久2)、横浜・野毛の地に写真館を設立します。蓮杖はその後の写真業界を担う人材を多く育てた業績も含め、「日本写真の開祖」として今日にその名を残しています。また、ベアトや蓮杖らによって確立された写真製作・販売の手法はのちに、豪華な装丁のアルバムに代表される土産物用・輸出用の商品、いわゆる「横浜写真」を生み出し、明治中期の写真産業の隆盛をもたらすことになります。
下岡蓮杖《傘をもつ女》
明治初期 アルビュメン・プリント