《KAIROS/カイロス》より、2021-2025年、ビデオ
リニューアルオープン記念
オンライン作品
1989年の開館以来はじめてとなる約3年にわたる大規模改修を経て、生まれ変わった横浜美術館。この大きな節目に変化した建物を記憶にとどめるため、アーティスト・コレクティヴSIDE COREとともに360度カメラで撮影してきました。その映像作品を全館オープンの2025年2月8日に、オンライン公開します。
ギリシャ語で「時」を意味する「KAIROS」(カイロス/ギリシャ神話の男神)と題されたこの映像には、改修前後の内部空間や、美術館の引っ越しの様子など、工事囲いに閉ざされ、眠る美術館の舞台裏が記録されています。SIDE COREは、覆い隠される建物の中に、多国籍なアーティスト集団TOKYO ZOMBIEやミュージシャンのコムアイ、アーティストの森山泰地、菊地良太らを招き入れました。3年間にわたり変わりゆく建築とたわむれ、そこへの介入をこころみる彼らは、改修の経過に伴いそれぞれのライフステージでも変化を経験しました。彼らは、休館中に流れた時の移ろいを知らせる導き手として登場します。
SIDE COREにとってはじめての360度動画によるこの作品は、アーティストならではの新鮮な視点で美術館の変貌を伝えてくれることでしょう。限定公開の期間中に、ぜひオンライン上でお楽しみください。
*この作品はオンラインのみでご覧いただけます。館内では展示しておりません。
《KAIROS/カイロス》より、2021-2025年、ビデオ
KAIROS/カイロス
このプロジェクトに関しては、何となく計画した通りに進んできたような気もしますが、過去から現在が組み立てられてきた構築的な感覚はなく、曖昧になってしまった現在と過去の繋がりを何とか結びつけている感覚があります。特にこの3年における過去と現在の繋がりがぼんやりして感じるのは個人的事情もあると思いますが、実際にあまりに激動の時代でした。侵略戦争が世界各地で勃発し、コロナ禍があっけなく忘却され、世界に対する不安と疑念は深まるばかりです。
そんな状況だからなのでしょうか、アーティスト達の人間的な変化は大きく、3年前と別人だとすら感じてしまいます。今回のプロジェクトは360度カメラで、横浜美術館内部でアーティスト達のパフォーマンスを撮影した内容ですが、あえて過去と現在の映像を混在させて編集することで、現在の視点から薄くぼやけた3年前の美術館、アーティスト達の姿を再発見します。その瞬間が過去なのか現在なのかわからない状況を、360度カメラの幽体離脱した視点で追いかけながら、美術館という空間を通してのみ可能な時間体験を、バーチャルリアリティ表現によって探ります。
SIDE CORE
《KAIROS/カイロス》より、2021-2025年、ビデオ
2012年より活動を開始、東京都を拠点に活動。
メンバーは高須咲恵、松下徹、西広太志。映像ディレクターは播本和宜。
個人がいかに都市や公共空間のなかでメッセージを発するかという問いのもと、ストリートカルチャーの思想や歴史などを参照し制作する。ときに他ジャンルの表現者を交えたプロジェクトとして、 都市の死角や隙間となる場所で多彩な作品を展開。近年には、個展「SIDE CORE展|コンクリート・プラネット」(ワタリウム美術館+屋外、2024)開催、第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」(横浜美術館ほか、2024)参加。