岡倉天心生誕150年・没後100年記念/『國華』創刊125周年/朝日新聞創刊135周年記念
近代日本画壇を代表する巨匠・横山大観は、良き師・岡倉天心(おかくら・てんしん)から薫陶をうけ、大正期に共に歩んだ良き友4人、今村紫紅(いまむら・しこう)、小杉未醒(こすぎ・みせい)(放菴)(ほうあん)、小川芋銭(おがわ・うせん)、冨田溪仙(とみた・けいせん)との交流から、作風を飛躍的に発展させました。
天心は横浜生まれの思想家で、大観は天心が創設に関わった東京美術学校に第一期生として入学。天心が同校長職を追われた際には、師の目指す理想に共鳴し、日本美術院の創立に参画、新たな絵画の創出に邁進しました。
大正2年に天心が没すると、大観は日本美術院再興の先頭に立ちます。制作においては「朦朧体(もうろうたい)」を脱し、東洋趣味の水墨表現、大胆な色彩表現や構図、形態のデフォルメなどに取り組み、のびやかな明るさをもつ作品を生み出しました。その背景には、革新的な描法や構図を示した紫紅、線の片側をぼかして物のボリューム感を出す「片ぼかし」の技法をもたらした未醒(放菴)、陽気な気分や飄逸さをたたえて特有の自然観を表す芋銭、南画的傾向と装飾性を融合させた溪仙、これら個性豊かな画家たちとの交流があったのです。4人は制作だけでなく、一緒に旅行し、酒を酌み交わし、語らう仲間だったのです。
本展では、彼ら「良き師」「良き友」との関わりを読み解きながら、約140件の作品で明治から昭和初期までの大観芸術の魅力に迫ります。
展覧会図録
『横山大観展 良き師、良き友』 朝日新聞社/横浜美術館、2013年