1924年、詩人のアンドレ・ブルトンが、パリで「シュルレアリスム宣言」を発表しました。想像力を理性の鎖から解き放とうというその革新的な思潮は、文学、美術、映像などに取り込まれ、世界的に広がりました。
 創造の自由を(うた)っただけに、シュルレアリスムの造形はさまざまに展開しました。エルンストは、木や石に当てた紙を鉛筆などでこする「フロッタージュ」をひとつの表現に高め、《毛皮のマント》のように油彩作品にも応用しました。ドミンゲスが考案した「デカルコマニー」は、絵の具に紙を押しつけてできる偶然の形象を利用するものです。これらの技法は、意識に縛られない表現として称揚されました。
 また、ロートレアモンの詩句を引き、解剖台の上にミシンと蝙蝠傘(こうもりがさ)を並べたマン・レイの写真は、事物を非日常的に見せることを狙った「デペイズマン」の手法にのっとっています。本来は別々のものであった画像を切り貼りする「コラージュ」も、凝り固まった観念に亀裂を生じさせる力を秘めています。
 描かれる主題も、空想の世界につながるものが好まれました。アダムとイヴ、ナルキッソス(ナルシス)といった、生と死とエロティシズムが渦巻く聖書や神話の物語は、豊饒(ほうじょう)なイメージ源として活用されました。

・ハンス・ベルメール 《人形》 1935年(後年のプリント) ゼラチン・シルバー・プリント
・ハンス・ベルメール 《人形》 1935年(後年のプリント) ゼラチン・シルバー・プリント
・サルバドール・ダリ 《ガラの測地学的肖像》 1936年 油彩、板
・サルバドール・ダリ 《「ガラの測地学的肖像」のための素描》 1936年 鉛筆、紙
・サルバドール・ダリ 《ヒステリックな光景》 1937年 インク・鉛筆、紙
・サルバドール・ダリ 《バラの頭の女性》 1980-81年鋳造 ブロンズ、プラスティック
・ポール・デルヴォー 《三つの骸骨》 1942年 墨・淡彩、紙
・ポール・デルヴォー 《階段》 1948年 油彩、板
・オスカル・ドミンゲス 《無題―デカルコマニー》 1953年 油彩、板に貼った紙
・マックス・エルンスト 《毛皮のマント》 1926年 油彩、カンヴァス
・マックス・エルンスト 《子供のミネルヴァ》 1956年 油彩、カンヴァス
・マックス・エルンスト 《エディプス 25》 1966年 写真印画紙、墨
・マックス・エルンスト 《形状、No.4》 1974年 コラージュ、フロッタージュ、紙
・ヴィフレド・ラム 《アダムとイヴ》 1969年 油彩、カンヴァス
・ルネ・マグリット 《王様の美術館》 1966年 油彩、カンヴァス
・ルネ・マグリット 《レカミエ夫人》 1967年 ブロンズ
・アンドレ・マッソン 《ナルキッソス》 1934年 油彩、カンヴァス
・ジョアン・ミロ 《花と蝶》 1922-23年 テンペラ、板
・マン・レイ 《卵と貝殻》 1931年(後年のプリント) ゼラチン・シルバー・プリント
・マン・レイ 《解剖台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会いのように美しい》 1935年頃(後年のプリント) ゼラチン・シルバー・プリント


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