横浜美術館コレクション展 2012年4月7日(土曜)から6月24日(日曜) 横浜美術館

横浜美術館コレクション展について

1920年代に欧米を中心に興隆したシュルレアリスム運動は、写真芸術にも大きな影響を与えました。今回の特集展示では、当館での企画展「マックス・エルンスト-フィギュア×スケープ」(4月7日~6月24日)にちなんで、シュルレアリスムと関わりの深い写真家たちの作品をご紹介します。

ヴァルター・ベンヤミンは1931年に著した『写真小史』において、「・・・写真のなかに、現実がその映像の性格をいわば焼き付けるのに利用した一粒の偶然を、凝縮した時空を、探しもとめられずにはいない気がしてくる」と述べ、写真こそ「視覚的無意識」を初めて映像によって具現したのだと主張しています。シュルレアリスムの画家たちは、偶然性をともなう様々な技法をその制作に取り入れることで、現実のなかに潜む現実を超えた存在を視覚化しようと試みました。その意味において写真というメディアは、シュルレアリスムの理念の実践においてもっとも純粋な「技法」の一つであったとも言えるでしょう。

マン・レイは、《カザティ侯爵夫人》等において、偶然生じるブレの効果を作品に取り入れています。また彼は多くの作品に「ソラリゼーション」というネガ・ポジを反転させる手法を用い、現実と夢の狭間のような世界を創出しました。同じような志向性は、アンドレ・ケルテスの、鏡を使って女性の裸体を変形させる「デストーション」シリーズにも見て取れます。

一方、ジャック=アンドレ・ボワファールの写真には、人気のない街路や足の親指など、観るものの想像力を喚起するイメージが紡ぎだされています。石壁のテクスチャーや娼婦宿を写したブラッサイもそうですが、写真の可塑性に負うのではなく、何気ないショットを介して日常の断片に潜む「超現実」をあぶり出すような彼らの作品こそ、写真メディアとシュルレアリスムとの強い結びつきを実証するものと言えるかもしれません。

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展示室風景

展示風景