横浜美術館コレクション展 2012年4月7日(土曜)から6月24日(日曜) 横浜美術館

中平卓馬 1960s-70s

中平卓馬は、先鋭的な写真作品と文筆活動によって、日本の現代写真において重要な役割を担った写真家です。

1938年(昭和13)に東京に生まれ、60年代半ばから写真家として活動をはじめた中平は、68年(昭和43)に多木浩二(たき・こうじ)、高梨豊(たかなし・ゆたか)、岡田隆彦(おかだ・たかひこ)とともに写真同人誌『プロヴォーク』を刊行しました。そこで彼らが打ち出した「アレ・ブレ・ボケ」などと呼ばれる新しい表現は、当時の写真界に衝撃を与えます。特に中平は、写真の構図や階調に関する規範を破壊するような制作を通じて、従来の写真表現への反抗の立場を明らかにしました。この時期の仕事は70年(昭和45)の写真・評論集『来たるべき言葉のために』に集成されますが、そうした表現性の強い創作を73年(昭和48)の評論集『なぜ、植物図鑑か』において自ら否定し、以後、文字通り「図鑑」を編むかのような記号的・即物的なイメージの提示へとスタイルを転回していきます。

1977年(昭和52)に病に倒れて生死の境をさまよい、記憶の大半を失いますが、以後も写真家としての活動を継続し、2003年(平成15)には横浜美術館で初の大規模な個展「原点復帰-横浜」を開催しました。今回展示されている89点の作品は、その個展開催に際してオリジナルネガから新たにプリントされ、2010年(平成22)に作家からの寄贈により当館に収蔵されたものです。その内訳は、『プロヴォーク』と『来たるべき言葉のために』の刊行に前後する1968~73年(昭和43~48)の初期作品群30点、1971年(昭和46)のパリ青年ビエンナーレ出品作《サーキュレーション-日付、場所、イベント》35点、1975年(昭和50)に『朝日カメラ』に掲載された写真を中心とした《都市・陥穽》(とし・かんせい)5点、70年代半ばに取材した離島をモティーフとした連作《奄美》6点および《国境・吐カ喇列島》(こっきょう・とかられっとう)13点とに大別され、1960年代後半から70年代半ばにいたる日本の写真表現の転換期における中平の仕事を概観できる内容となっています。

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展示室風景

展示風景