【夏休み特別展示】ヨココレ広場の動物たち
展示風景

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 近年、動物を題材に選ぶ若い彫刻家や美術家が増えています。動物を表した美術の起源は古く、アルタミラ(スペイン)やラスコー(フランス)など、人類最古の美術とされる旧石器時代の洞窟壁画に遡ります。そこには生命感にみちた野牛が圧倒的な迫力で描かれていますが、人の姿はほんの僅かです。原始美術では動物は人にも増して重要な表現対象だったのです。その後、地域や文化によって事情は様々であるにせよ、動物の姿が美術作品から消え去ってしまった時代はないでしょう。もっとも絵画では主役は人であって、動物だけが表された作例は限られています。これに対して彫刻や工芸といった立体表現においては、実に多種多様な動物たちが、ある時はリアルに、ある時は変容した姿で、素材や大きさが千差万別であっても、作品の主人公としての地位を与えられています。人は暮らしや文化の中にイメージとしての動物の居場所を常に用意してきたといえるでしょう。彫刻家や工芸家にとって動物という題材は、人を表すよりもはるかに幅広い形態の宝庫です。しかしまた一方で、作品が何の動物であるかが見る人に伝わる必要もあります。動物を表す立体作品は、そのような意味で、芸術家の豊かな発想と工夫の跡を私たちにわかりやすく見せてくれます。
 そこで横浜美術館所蔵の立体作品の中から、動物をモチーフにしたものを集めました。横浜の陶芸家で「真葛焼」の創始者、初代宮川香山の晩年作、古清水写の掛額と青華鳳凰形花器など3点。日本の近代ガラス工芸の先駆者で、色ガラスの花器などを得意とした岩田藤七。ポーランド出身、フランス在住のガラス作家で、光学ガラスの塊をハンマーでたたき割る作品で知られるチュスラフ・ズベール。チェコの現代ガラス作家でキャスティング(鋳造)を用い、深い色味と重厚な量感が特徴のイワナ・ショルツォヴァ。戦後日本の反芸術運動ネオ・ダダイズム・オーガナイザーズのメンバーであった吉村益信の≪大ガラス≫。この作品はダダの草分けマルセル・デュシャンの代表作が大きなガラス板を使っていたため、「大ガラス」と通称されていたのを日本語でもじっています。そして横浜在住の木彫家大島康之が、彩色木彫という独特の方法で動物の毛皮を表現した作品をご覧いただきます。