展示室3 / 風景画と花鳥画

豊かな自然と四季の変化に富む日本では、風景や花鳥は古くから絵画の重要なテーマとされてきました。ここでは、春から夏にかけての季節にちなんだ花鳥画や風景画を紹介いたします。
今村紫紅[いまむら・しこう]の《潮見坂》は、旧東海道(静岡県)の新居関[あらいのせき]と白須賀[しらすか]の間にある有名な坂を描いた作品です。文人画をおもわせる縦長の画面をいっぱいに使い、下端に平地を、上端に遠景の山を配することで、急な坂道と地形の特徴がたくみに表されています。
小茂田青樹[おもだ・せいじゅ]の《ポンポンダリア》は、みずみずしいダリアの生命力と壺の持つひんやりとした質感が、細密描写によって対照的に描かれています。壺のモデルとなっているのは、彼が東京国立博物館で観た中国・元時代の青花(白地に青藍色の文様が描かれた陶磁器)といわれています。この作品は、別々に写生した壺とダリアを、画面上で組み合わせたものですが、壺に生けられた色とりどりのダリアが安定感のある構図で描き出されています。
片岡球子[かたおか・たまこ]は、大正15年から昭和30年まで横浜市立大岡尋常高等小学校(現横浜市立大岡小学校)の教師をつとめ、横浜とはゆかりの深い作家です。富士山をはじめとする風景画や、戦国武将や浮世絵師など歴史上の人物を主題とした「面構[つらがまえ]」の連作で知られています。作者の持ち味である、対象の本質に迫る力強い造形と、鮮やかな色彩による装飾的な画面構成は、この《富士》にもよく表れています。

今村紫紅《潮見坂》今村紫紅(明治13-大正5)
《潮見坂》
大正4年
絹本着色、軸
IMAMURA Shiko (1880-1916)
Shiomizaka-Slope
1915
color on silk, hanging scroll


出品リスト

風景画と花鳥画
作家名 作品名 制作年 技法・材質 備考
下村観山 春日野 1900
(明治33)
絹本着色、軸  
下村観山 松ニ鶴 1927
(昭和2)
絹本着色、6曲1双  
今村紫紅 月明り 1914
(大正3)頃
絹本着色、軸 ※4月19日からの展示
今村紫紅 細雨 1915
(大正4)
絹本着色、軸  
今村紫紅 潮見坂 1915
(大正4)
絹本着色、軸  
松林桂月 四季山水図 1919
(大正8)
絹本着色、軸(4幅対) 井上孝太郎氏寄贈
小林古径 初夏 1919
(大正8)頃
絹本着色、軸  
鏑木清方 暮雲低迷 1920
(大正9)
絹本着色、6曲1双  
小茂田青樹 喜雀 1921
(大正10)頃
紙本淡彩、軸  
小茂田青樹 ポンポンダリア 1922
(大正11)
絹本着色、軸  
速水御舟 1925
(大正14)
絹本着色、額 藤浦了一氏寄贈
前田青邨 芥子図 1935
(昭和10)
紙本着色、軸  
中島清之 流れと草花 1945
(昭和20)
紙本着色、額 山口久像氏寄贈
安田靫彦 1951
(昭和26)
紙本着色、額  
工藤甲人 羽化 1966
(昭和41)
紙本着色、額 神戸とわ氏寄贈
片岡球子 富士 1980
(昭和55)
紙本着色、額 本石油精製(株)横浜製油所、根岸製油所指定寄付
小倉遊亀 並ぶ 1983
(昭和58)
紙本金箔着色、額  
小倉遊亀 つぼみ 1985
(昭和60)
紙本着色、額 テレビ神奈川寄贈
守屋多々志 孤帆遠影 1986
(昭和61)
紙本着色、額 守屋多々志氏寄贈