19世紀半ば以降のフランスの美術には、新しい潮流が次々と現れました。クールベの写実主義(レアリスム)、その系譜につながるバルビゾン派や印象派。あるいは、内面の世界を描こうとしたモローやルドンの象徴主義。直線的に概略することができないほど、活気あふれる半世紀でした。
 印象派に触れて明るい色彩を発見したセザンヌは、そこにとどまらず、かっちりと構築された画面を求めました。彼の実作品と、「自然を円筒、球、円錐によって扱う」という言葉は、20世紀の造形をになう若い芸術家に大きな影響を与えます。
 ピカソとブラックは、セザンヌが示した問題をキュビスムの誕生へとつなげました。さまざまな視点を組合わせて、三次元の立体を展開図のように写しとるキュビスムの方法は、秩序だった画面構築への関心を引き継ぐものです。ピカソの《ひじ掛け椅子で眠る女》とブラックの《画架》は、彼らの円熟期の作品で、やはり、構成に対する厳格な意識が画面を支配しています。しかしそこには、眠る女の生命力やアトリエの事物への愛情など、現実感も濃厚に漂っています。理知的な構成とあたたかなリアリティーとが融和して、作品の魅力を生んでいるといえるでしょう。

・ジョルジュ・ブラック "静物 II" 1912年(1953年刷) エッチッング 88-PRF-001
・ジョルジュ・ブラック  "画架"  1938年  油彩、カンヴァス 88-OF-001
・エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン  "立っている若い女"  制作年不詳 油彩、カンヴァス  寄託作品 ・ポール・セザンヌ  "縞模様の服を着たセザンヌ夫人"  1882-85年  油彩、カンヴァス 87-OF-001
・ポール・セザンヌ  "ガルダンヌから見たサント=ヴィクトワール山"  1892-95年 油彩、カンヴァス 87-OF-002
・ギュスターヴ・クールベ  "海岸の竜巻(エトルタ)"  1870年  油彩、カンヴァス 坂田武雄氏寄贈 83-OF-006
・シャルル=エミール・ジャック  "牧舎"  制作年不詳  油彩、カンヴァス  坂田武雄氏寄贈 83-OF-01H
・ジャン・ポール・ローランス  "カロリング朝最後の玉座"  1888年  油彩、カンヴァス 85-OF-004
・フェルナン・レジェ  "コンポジション"  1931年  油彩、カンヴァス 88-OF-010
・アリスティド・マイヨール  "衣をまとう女"  制作年不詳  ブロンズ  坂田武雄氏寄贈 83-SF-001
・アンリ・マティス ダンス  "1935-36年"  エッチング 88-PRF-011
・ギュスターヴ・モロー "岩の上の女神"  1890年頃  油彩、紙  坂田武雄氏寄贈 83-PRF-011
・パブロ・ピカソ  "ギターを持つ男"  1915(1929年刷)  ビュラン 86-PRF-003
・パブロ・ピカソ  "ひじ掛け椅子で眠る女"  1927年  油彩、カンヴァス 88-PRF-009
・ジャン=フランソワ・ラファエリ  "フランスの田舎"  制作年不詳  油彩、カンヴァス 坂田武雄氏寄贈 83-OF-024
・オディロン・ルドン  "二人の踊女" 制作年不詳  油彩、カンヴァス  坂田武雄氏寄贈 83-OF-025
・オーギュスト・ロダン  "鼻の潰れた男(ビビの肖像)"  1863-64年  ブロンズ 坂田武男氏寄贈 83-SF-003
・オーギュスト・ロダン  "バルザックの頭部"  1897年以降  ブロンズ  坂田武男氏寄贈 83-SF-004
・メダルド・ロッソ  "ユダヤの少年"  1893年  ワックス、石膏 87-SF-062


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