日本美術院は、明治31年(1898)に岡倉天心を中心に結成された在野の美術団体です。明治30年代の末に一時衰退しましたが、天心の没後大正3年に、横山大観、下村観山らによって再興され、現代まで続いています。院展とはこの日本美術院の展覧会の略称です。
大観、観山、菱田春草ら草創期の画家たちは、西洋画の技法や様式を研究し、日本画の新しい表現を追究しました。特に彼らが試みた没線描法は、「朦朧体」と呼ばれて非難されましたが、現在ではこのような試みが日本画の変革と近代化をもたらしたと考えられています。
第2世代の今村紫紅、安田靫彦は、物語や歴史をテーマとした作品に取り組み、新しい表現を模索しました。紫紅は南画や新印象派の点描法などを研究し、風景や人物をおおらかに描きました。また、紫紅や靫彦を中心とする日本画研究団体の紅児会や赤曜会では、前田青邨、速水御舟、小茂田青樹ら第3世代の画家たちが研鑽を積み、日本画壇に新風を送りました。
こうした近代日本画の伝統を継承すると同時に、そこに新しい表現を取り入れようとする革新的な姿勢は、片岡球子、守屋多々志ら現代の院展の画家たちにも受け継がれています。
・今村 紫紅 "土蜘蛛草紙(模写)" 1898-99年 紙本着色、巻子、1巻 88-JP-010
・今村 紫紅 "伊達政宗" 1910年 絹本着色、軸 原範行・會津子氏寄贈 88-JP-013
・太田 聴雨 "大原御幸" 1934年 絹本着色、軸 84-JP-003
・小倉 遊亀 "良夜" 1957年 紙本着色、額 84-JP-005
・小茂田 青樹 "ポンポンダリア" 1922年 絹本着色 、軸 83-JP-002
・片岡 球子 "富士" 1980年 紙本着色 日本石油精製(株)横浜製油所、根岸製油所指定寄付 82-JP-002
・堅山 南風 "蜒 魚楽図ノ内其三" 1926年 紙本着色、5幅対の内 94-JP-001-03
・小林 古径 "竹取物語 昇天図" 1917年 紙本着色、額 87-JP-008
・小林 古径 "初夏" 1919年頃 絹本着色、軸 87-JP-009
・下村 観山 "虎渓三笑" 1917年頃 絹本墨画淡彩、軸 88-JP-039
・月岡 榮貴 "愛鳥図" 1980年 紙本着色、額 88-JP-046
・中島 清之 "和春" 1947年 紙本着色、2曲1双 山口久像氏寄贈 84-JP-019
・中島 清之 "内海" 1954年 紙本着色 山口久像氏寄贈 84-JP-018
・速水 御舟 "麦" 1925年 絹本着色、額 藤浦了一氏寄贈 2000-JP-006
・菱田 春草 "夏汀" 1902年 絹本着色、軸 86-JP-052
・前田 青邨 "芥子図" 1935年 紙本着色、軸 88-JP-050
・守屋 多々志 "孤帆遠影" 1986年 紙本着色、額 守屋多々志氏 寄贈 88-JP-069
・安田 靫彦 "松風" 1906年 絹本着色、軸 96-JP-002
・山村 耕花 "ウンスン歌留多" 1930年 紙本着色、2曲1双 89-JP-007
・横山 大観 "虎渓三笑" 1912年 絹本水墨、軸、3幅対 85-JP-021
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