19世紀末から20世紀初頭にかけて、アルフレッド・スティーグリッツは、イギリスの自然主義的写真を踏襲し、印象派による絵画のイメージを模倣することによって、写真を芸術の域まで高めることを試みました。1910年代の末になると、そうした絵画主義的写真に対し、エドワード・ウェストンらを中心に、対象を忠実に再現するという写真の特性に基づいた独自の表現を模索する動きが活発となりました。しかしながら、近接して事物を精緻にとらえたウェストンの作品もまた、当時の前衛である抽象絵画をわれわれに想起させます。
1950年代になると、それまでの写真表現を根底から覆(くつがえ)すことで写真作品の存在を問う作家たちが現れはじめました。ロバート・フランクは、国の繁栄の影で取り残されたアメリカ社会の負の現実を、不安定な構図のうちに写し取りました。ウィリアム・クラインは、写真作品においては禁じ手とされていた、ボケ、あるいはブレの手法を大胆に使い、矛盾に満ちた社会を批判的に暴き出しました。
ダイアン・アーバスは、1960年代に社会の底辺に生きる人びとを真正面からとらえたドキュメント写真を撮りはじめました。社会的に顧みられない対象を真摯(しんし)に見つめたこれらのイメージは、写真作品を個人的、かつ暗示的な表現へと移行させました。
ここでは同時代のファッション写真も併せて展示します。 |