展示室3 / 現代の美術

クリスチャン・ボルタンスキーは、1944年パリ生まれ。彼はさまざまな素材を複合的に組み合わせて西洋美術の伝統的主題であるヴァニタス(はかなさ)を表現してきました。映像作家として出発した彼は、1985年から子供の肖像写真をつかった「モニュメント」シリーズを発表しました。《シャス高校の祭壇(さいだん)》は、このシリーズの延長線上にあり、ウィーンの高校に1931年に在籍したユダヤ人の学生たちの写真を祭壇状(さいだんじょう)に並べ、ほの暗い電球の光で浮かび上がらせた作品です。彼らについて作家から伝えられる情報はただそれだけであり、その後に起こるナチスの大虐殺(ホロコースト)との関連も明確に示されることはないままに、人間のはかなさが暗示されています。

バーバラ・クルーガーは、1945年アメリカ、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。デザイナーとして出発し、写真や広告の技法を応用して現代社会を痛烈(つうれつ)に批判するメッセージを内包する作品を展開してきました。《無題(You've got money to burn)》は、布にくるまれた四角い物に、たばこの火を押し当てる男性の手を写した巨大な写真の上を、真っ赤な斜線と帯が横断して走り、その帯の上には「あなたは燃やす(消費する)ための金を得た」と読み取れる言葉が書かれています。写真と言葉の組み合わせによって、現代の消費社会を風刺(ふうし)する作者の意図が読み取れます。


クリスチャン・ボルタンスキー
《シャス高校の祭壇》
1987年
Christian BOLTANSKI
Autel de Lycée Chases
1987
©ADAGP,Paris & SPDA,Tokyo,2005


※7月29日から8月31日まで、展示室3は、企画展「わたしの美術館展‐市民が選んだ横浜美術館ベスト・コレクション‐」のセクション6「生きる‐現代の美術」の会場も兼ねています。同展は、2004年に市民から募集した「横浜美術館コレクション 私が選んだこの1点」の応募結果で、人気の高かった作品を中心に、当館のコレクションの名品約160点で構成するものです。作品の近くには、市民から寄せられた作品についての感想をパネルにより紹介しています。

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