展示室2 / フランスの近代美術―セザンヌを中心に

19世紀前半、市民社会の成立にともなって美術の世界でも日常生活に密着した主題がとりあげられるようになり、農村の風景を描くバルビゾン派や、自然の客観的な描写を目指すクールベのレアリスム(写実主義)が登場しました。こうした写実の傾向は、世紀後半に誕生する印象派に引継がれます。ピサロを通じて印象主義を知ったセザンヌも、自然の冷静な観察に向かいました。しかし、移ろう光の表現に腐心した印象派に満足しきれず、次第に堅固に構成された絵画を求めはじめます。《縞模様の服を着たセザンヌ夫人》はそのような関心を顕著に示しており、夫人の上半身がつくる三角形と椅子の背もたれの赤い色面が、画面に安定感を与えています。
《ガルダンヌから見たサント=ヴィクトワール山》では、折り重なる山並みが大きな面で捉えられ、幾何学的な秩序が生まれています。同じ頃に制作された一連の水浴図も、さまざまな姿態の人体とその配置によって空間を構築する、画家のあくなき探求を感じさせます。
セザンヌが開いた道は、ブラックやピカソのキュビスムへ続いていきました。なかでもブラックは、キュビスムの主要なモチーフとなった静物に生涯とりくみ、第一次世界大戦後は、深みのある落ち着いた色調の静物画を数多く制作します。《画架》では、縦に三分割された構図と、身の回りの品々をあたたかく見つめる画家の視線が響きあっています。

ポール・セザンヌ《カルダンヌから見たサント=ヴィクトワール山》
ポール・セザンヌ
《カルダンヌから見たサント=ヴィクトワール山》
1892-95年
Paul CÉZANNE
La Montagne Sainte-Victoire, vue de Gardanne
1892-95

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