横浜美術館コレクション展第2期 2012年7月14日(土曜)から9月23日(日曜) 横浜美術館コレクション展第2期 横浜美術館

人の形を見る―不思議な具象

さまざまな人の形

展示風景

展示風景

 極端にその対象が持つ要素を捨てることなく対象物を具体的に描く絵画は、20世紀以降生み出された抽象絵画の対概念として、具象絵画と呼ばれます。描かれた形がすぐにそれとわかっても、「具象」「抽象」の区別は不分明であり、さまざまな表現は両者のあわいに成立しています。

 肖像画は、実在の人物の似姿が描かれた具象絵画の代表格ですが、19世紀の終わりから20世紀にかけての西欧では、写真技術の登場もあって、描かれた人物がそこに現出するかのように描く迫真性より、絵画に特有の表現が追求されました。モーリス・ド・ヴラマンクやポール・セザンヌ、そしてパブロ・ピカソの女性像から、複数の視点などによる人物像の変容を知ることができます。また、幼児を対象とした絵画、顔を大きく画面に収めたポートレート、少年像、ダンスなど躍動する人体や動く人体が水に映し出される作品など、ゆるやかなグルーピングで、人の形がさまざまな意味で採り上げられている様をご覧いただきます。

 その中に、横浜美術館が所蔵する奈良美智作品(寄託)を織り込んで展示しました。1990年代以降の奈良の絵画を、セザンヌ、ピカソ、フランシス・ベーコンなど、当館コレクションにおける近代絵画の名品と並置させたとき、奈良の制作過程や技法、また現実離れした空間に子どもの姿として描き出される特有の人物像が、具象から抽象へと展開した近代美術の変遷から導かれることに気付かされるでしょう。

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