展覧会概要

木版画は、日本人にとって最も親しみ深い芸術表現のひとつといえるでしょう。

江戸時代、浮世絵版画が一世を風靡し、木版画は「庶民の芸術」として定着しました。この時期には、人々の暮らしにより密着した千代紙や引き札なども木版技法で作られました。大正時代には、木版本来の力強い表現力を生かした「創作版画」や、浮世絵の繊細な線や鮮やかな色彩を受け継ぐ「新版画」が誕生しました。また、木版ならではの柔らかい風合いと近代的なデザインが融合した本の表紙や絵封筒なども、当時の人々の暮らしを彩っています。

伝統と革新の上に独自の発達をとげてきた日本の木版画は、戦後、国際的に大きな脚光を浴びることとなります。それにともなって国内でも木版画熱は再び高まりをみせ、以降、様々な複製技術が発達した現代にいたるまで、木版という伝統技法にこだわって制作を続けているアーティストが数多くみられます。

横浜美術館は幕末から現代までの約1,600点におよぶ木版画を所蔵しています。この展覧会では、当館の収蔵品を中心に、現代作家による新作も加えた約220件を通じて、各時代の木版表現の粋をご紹介します。庶民性と独創性にあふれる「魅惑のニッポン木版画」の世界を、どうぞご堪能ください。

※会期中、一部展示替えがございます。

※出品リストはこちらから(3/27付で一部作品の展示期間を変更しています)

棟方志功

棟方志功(むなかたしこう)  《華狩頌》(はなかりしょう)
1954年(昭和29) 
木版 130.0×158.0cm  日本民藝館蔵