みどころ
1.富士ゼロックス版画コレクションを大規模に紹介する初の試み
富士ゼロックス版画コレクションは1988年以来、「版画もしくはそれに類する複数制作されたもので、その時代の精神や文化を表徴する作品」を指針として、欧米と日本の重要な作家による版画、写真、コピー・アート(ゼログラフィーによる作品)、アーティストブックなどを収集しています。そのコレクションは、社業とも関係の深い美術作品(版画)を通しての社会貢献を目指してつくられたものです。現在約950点を擁し、2010年に横浜のみなとみらい21地区に新築された研究開発拠点ビル内の「富士ゼロックス・アートスペース」で定期的な展示を行っています。 そのコレクションからの約150件・350点がまとまって展示されるのは本展が初めてとなります。
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2.ヴァルター・ベンヤミンが言及した美術や写真の実作品
ヴァルター・ベンヤミンの論文『複製技術時代の芸術作品』は、その後の美術、写真、映画の評論だけでなく、メディア論や社会学、思想研究に大きなインパクトを与え、今日も多くの人びとに読み継がれ、解説書も出版されています。本展は特にヴァルター・ベンヤミンの写真や美術に関する考察や発言に注目し、彼が著作中で言及した写真や美術の作例を展示します。
- ナダールによるボードレールの肖像
- アジェによるひと気のないパリの都市風景
- コンタクトプリントの発明者タルボットが美術史の名作を写した《ラオコーン像》
- 写真による社会構成員の総目録を目指したザンダー
- 植物の拡大写真集を『芸術の原形態』として出版したブロースフェルト
- ヴァルター・ベンヤミンが「複製としての烙印」と呼んだ廃品コラージュを作ったシュヴィッタース
- ヴァルター・ベンヤミンが終生愛好した水彩画の作者クレー など
そのほか、パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、ハンス(ジャン)・アルプ、マックス・エルンスト、ラースロー・モホイ=ナギ、マルセル・デュシャン、さらにヴァルター・ベンヤミンが高く評価したシュルレアリスムの詩人のひとりポール・エリュアールがマン・レイと共作した詩画集など、ヴァルター・ベンヤミンの著述に登場する代表的な写真家や美術家たちの実作品を、美術史の流れの中で鑑賞することができます。