「賛美小舎」―上田コレクション

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 共に高校教師であった上田國昭(うえだ・くにあき)氏・克子(かつこ)氏夫妻により収集された美術品で飾られた自邸「賛美小舎(さんびしょうしゃ)」は、夫妻が美を賛え、美術に関する活動をする拠点となっています。

 上田氏は、かねてより古美術に関心を寄せ、投機的に陶磁器などを収集していましたが、1987年、47歳の時、若手美術家の制作活動を支援しようと、新進の美術家に目を向けました。きっかけは川﨑麻児(かわさき・あさこ)の絵画との出会いでした。沈思黙考を誘う川﨑の画風が心に響いた上田氏は、この画家を調べる中で、新進の日本画家に与えられる山種美術館賞展を知りました。上田氏は、従来の日本画の概念を問い直す挑戦的な創作活動を始めた気鋭の画家たちの作品を、画商を通じて購入し、画家たちを支援しました。その行為によって、画家たちは大いに励まされ、上田氏は画商に現代美術のパトロンの一人と見做されるようになりました。こうして、日本画の画材や手法に深く関わって制作する作家たち、岡村桂三郎(おかむら・けいざぶろう)、小野友三(おの・ゆうぞう)、河嶋淳司(かわしま・じゅんじ)、武田州左(たけだ・くにさ)、山本直彰(やまもと・なおあき)、マコト・フジムラなどの作品が賛美小舎に次々と収められ、上田コレクションの大きな特色となりました。

 一方、石原友明(いしはら・ともあき)の1988年ヴェネチア・ビエンナーレ出品作に出会って以来、上田氏は立体やインスタレーションなど、多様なメディアで創作を展開する中堅、若手の現代作家たち、石原友明、松井智惠(まつい・ちえ)、柳幸典(やなぎ・ゆきのり)、湯川雅紀(ゆかわ・まさき)らにも魅せられ、収集しました。

 そのようにして、上田コレクションは、1980年代後半以降の現代美術を牽引した作家たちの充実した作品群を有するようになりました。

川﨑 麻児 ≪目を閉じて≫

川﨑 麻児 ≪目を閉じて≫
1987年(昭和62)
紙本着色
130.3×162.0cm

福井 江太郎 ≪如≫

福井 江太郎 ≪如≫
2000年(平成12)
岩絵具、墨、木炭、麻紙
180.0×180.0cm

河嶋 淳司 ≪犬面≫

河嶋 淳司 ≪犬面≫
1989年(平成元)
紙本着色
88.5×71.0cm

須田悦弘≪萩≫

須田悦弘 ≪萩≫
2009年(平成21)
木、彩色
2.5×4.0×3.5cm

※いずれも、賛美小舎 上田國昭氏・上田克子氏寄贈