横浜美術館

シェルレアリスムの作品と光

 シュルレアリスムは、1924年に詩人アンドレ・ブルトンによってパリで提唱され、その後国際的な広がりを見せた芸術革新運動です。無意識の世界にこそ美や真実が宿ると信じた彼らは、ものや言葉との偶然の出会いを手掛かりとした手法を開発し、夢や幻想など意識下に埋もれる豊かなイメージを引き出そうと試みました。ここでは、シュルレアリスムの作品の中で光がどのように扱われているかを見てみます。

 サルバドール・ダリの《幻想的風景》では、光に満ちた中央画面に対し、左右には朝焼けと夕暮れの情景が描かれ、太陽の動きに伴う空の変化が表されます。この一日の流れは、本作の発注主であるヘレナ・ルヴィンシュタインの生涯を象徴していると考えられています。一方で、青い球体は、あたかも中央画面の光を受けているかのようです。こうした不合理な光の設定により夢幻的な世界が創出されています。

 またルネ・マグリットによる《青春の泉》は、薔薇色に輝く空が印象的です。この空の色には、詩的な意味も込められます。画面中央の「Roseau(仏語で葦の意)」という言葉には、石板頭部の「鳥(Oiseau[仏])」と空の「薔薇色(Rose[仏])」がかけられているかのようです。

 このようにシュルレアリスムの作品における光の表現は、複数の光源の設定や言葉との密接な関係などにより、夢や幻想の世界を視覚化するために重要な役割を果たします。光を意識した現代の絵画もあわせて展示しますので、ご覧ください。

展示風景

展示風景

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