都市へのまなざし:須田一政、石内都、金村修、米田知子
Gaze on Town:Suda Issei, Ishiuchi Miyako, Kanemura Osamu and Yoneda Tomoko
展示風景

展示風景

 

日本各地の都市を舞台にした連作写真を手がけた4人の現代写真家を紹介します。

須田一政[すだ・いっせい]は、写真集『わが東京100』(1979)において、生まれ育った神田や、浅草、谷中といった慣れ親しんだ下町の諸相を切り取りました。建物やそこに住む人々、日用品など、須田の注意を引いた大小さまざまなモティーフが、近い距離感でカメラに収められています。

須田とおなじく、幼少期を過ごした故郷にカメラを介して向きあった石内都[いしうち・みやこ]の『絶唱・横須賀ストーリー』(1977)。米軍がそこかしこで存在を主張する横須賀という街の混沌や、寂寥(せきりょう)感ただよう海辺の風景を、彼女はあたかも自伝を綴るように、思春期の濃密な記憶とともに見つめなおします。 『Keihin Machine Soul』(1996)において金村修[かねむら・おさむ]は、京浜地域の猥雑(わいざつ)と空疎(くうそ)の入り交じった様相を切り取ります。電線、看板、ネオンサインといった人工物が押し込められたその写真は、“Keihin”という地区の固有性を離れ、都市とその周縁がおりなす日本における「町」の構造そのものを露(あら)わにするかのようです。

1995年1月の阪神淡路大震災直後に、被災地の惨状を取材した米田知子[よねだ・ともこ]は、10年後、再び現地に赴(おもむ)いて、復興後の状況をカメラに収めました。白黒とカラーとで撮り分けられたこの2つの時期の写真群が並置されたとき、それぞれの場所に横たわる時間と記憶とが鮮やかに浮かびあがります。

戦後から今日に至る日本の軌跡を象徴するようなそれぞれの都市。おのおのの写真家が、深い想いを込めて、あるいは冷徹さをもって向けた都市へのまなざしのありようをご覧ください。

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