New Artist Picks: Wall Project
浦川大志|掲示:智能手机ヨリ横浜仮囲之図

概要
横浜美術館では、将来さらなる活躍が期待される若手アーティストを紹介する小企画展「New Artist Picks」を、2007 年よりアートギャラリーなど館内の展示スペースで開催してきました。
大規模改修工事のため休館中の今回は、その特別版となる「Wall Project」として、横浜美術館正面のグランモール公園「美術の広場」に面した仮囲いで、2回にわたり若手アーティストの創作を紹介します。「村上早|Stray Child」展につづく第2回は、ミレニアル世代の感覚を描き出す、浦川大志(うらかわ・たいし/1994 年生まれ)を紹介します。

《仮囲い》 2022年 パネルに綿布、ジェッソ、アクリル 75×322cm 撮影:山中慎太郎

掲出イメージ 全長約52mとなる全5点の新作が仮囲いを彩ります
本プロジェクトでは、全て新作による5点の連作を紹介します。

(参考図版)歌川広重(三代) 《横浜波止場より海岸通異人館之真図》 1870年代(明治初期) 多色木版、三枚続 35.8 x 72.5 cm(3枚貼合せ) 横浜美術館蔵(齋藤龍氏寄贈)
一風変わった展覧会タイトル「掲示:智能手机ヨリ横浜仮囲之図」は、浦川がインターネットを探索するなかで見つけた横浜美術館所蔵の歌川広重(三代)《横浜波止場より海岸通異人館之真図》(1870 年代)に由来しています。これは当時、外国人居留地であった海岸通(現在の山下公園付近)で、交易品を積み終わり、出帆したばかりの米国船と、それを眺める人物を描いた作品です。画面の一番左手に立ち、おそらく海の向こうの米国船を指さしている二人が、今回の浦川の作品にも登場します。
ただし、指差すものは船のような自分の外にある対象ではなく、自らが描かれる仮囲い自体です。「仮囲いを見る彼ら」の姿は、自然と「実際の仮囲いを見る私たち」の視線に重ねられます。二人の指差しは、私たちに「見る」という行為へと意識を向けさせる仕掛けなのです。
タイトルにある「智能手机」は中国語で「スマートフォン」を意味します。今回掲出されるのは作品を拡大プリントしたシートですが、プリントの上から、浦川によってQRコードが計7か所、加筆されています。私たちがスマートフォンをかざして、QRコードを読み取るときにまた「見る」という行為に意識を向けることになるのです。
スマートフォンのカメラ越しに作品、あるいは世界を見るとき、私たちは単に被写体を見ているのではありません。言うまでもなく、「何か」を見たいからこそカメラを向けるのであり、今日であれば、「何か」をSNS等で共有したいからこそ、カメラを向けているかもしれません。
浦川の作品はそうした視線が示す「見る者の欲望」を喚起させます。ここで作品は広重(三代)の作品に描かれた外国船のように、「自分の外」にあるものではなく、私たち自身もQRコードの呼び掛けに応じて、作中に参入していくひとつの場として機能します。ショッピングモールのショーウィンドウに対面した仮囲いは、浦川の手によって、物言わぬ平面であることをやめ、ひとびとの視線と欲望の行き交わすメディアとなるのです。
「New Artist Picks: Wall Project 浦川大志|掲示:智能手机ヨリ横浜仮囲之図」リーフレット [9,671KB]
ここに注目!
- ミレニアル世代が描く、インターネット時代の作品が街なかに出現
- 横浜ゆかりのモチーフが描かれた全て新作による5点の連作
- 作品内に点在するQRコードをスマートフォンで読み取るとあらわれるメッセージ
- 本展リーフレットをウェブサイトにて無料公開。作家インタビューも公開予定
作家インタビュー
関連イベント記録映像「浦川大志トーク『イメージと制作について』」(2023年1月21日)
作家略歴

1994年 福岡県生まれ。
2017年 九州産業大学芸術学部美術学科卒業。
現在、福岡県を拠点に活動。
2018年 「VOCA展2018」(大原美術館賞受賞)
2019年 浦川大志&名もなき実昌 二人展「終わるまで終わらないよ」
(熊本市現代美術館)
2021年 「異景の窓」(CONTEMPORARY HEIS)
2022年 「@sanemasa5x #風景・それと・その他のಠ_ಠ」(MIZUMA ART GALLERY)

《窓と壁》 2022年 パネルに綿布、ジェッソ、アクリル 75×322cm 撮影:山中慎太郎

《中華風》 2022年 パネルに綿布、ジェッソ、アクリル 75×322cm 撮影:山中慎太郎
基本情報
期間 | 2022年11月14日(月)~2023年5月31日(水)*予定 |
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場所 | 横浜美術館前 仮囲い(グランモール公園「美術の広場」) 横浜市西区みなとみらい3-4-1 |
観覧料 | 無料 |
主催 | 横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団) |
関連イベント
浦川大志トーク「イメージと制作について」

浦川氏は、複数のデジタル画像のイメージを重ねながら、カンヴァスにアクリル絵の具を使用して風景画を描いています。本プログラムでは、イメージの作り方や制作プロセス等についてデモンストレーションを交えてお話いただきます。
日程 | 2023年1月21日(土) |
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時間 | 14時~16時 |
出演 | 浦川 大志(アーティスト、NAP Wall出品作家) |
聞き手 | 南島 興(横浜美術館 学芸員) |
進行 | 北川 裕介(横浜美術館 エデュケーター) |
会場 | PLOT 48 シアターおよび、オンライン同時配信 |
対象 | 12歳以上 |
定員 | 現地:PLOT 48 シアター 30名(要事前予約、先着順) オンライン:Zoom 50名(要事前予約、先着順) |
参加費 | 無料 |
申込方法 | 申込フォーム 【現地】 【オンライン】 【オンライン】申込の方へ ・インターネットに接続できる環境があり、web会議システムZoomを利用できる方が対象です。 ・申込者全員にメールで参加方法をお知らせします。 ・本プログラムに参加された際に画面を撮影しSNSなどで公開することは、ほかの参加者のプライバシー保護の観点からお控えくださるようお願いいたします。 ※本プログラムのお申込み1件につき1つのメールアドレスが必要です。同じメールアドレスで複数回お申込みいただくと、最後に入力した情報のみ有効となります。 ※「受付確認メール」(自動返信)をお送りします。すぐに届かない場合はご連絡ください。 登録アドレスに間違いがあるか、PCからのメール受信拒否が設定されている場合があります。特に携帯電話、スマートフォンでお申込の場合、@yaf.or.jpの受信設定をお願いいたします。 |
申込締切 | 2023年1月17日(火)受付終了 ※先着順。定員に達し次第、受付を終了します。 |
お問合せ | 横浜美術館 教育普及グループ TEL 045-221-0366 10~18時 月~土曜(土曜以外の祝日、2022年12月29日[木]~2023年1月3日[火]をのぞく) |
*プログラムに係る感染防止対策 感染防止策チェックリスト [564KB]
*新型コロナウイルス感染症やその他やむを得ない事情により、プログラム内容の変更または中止をする場合があります。その際は、申込者全員にご連絡します。
*プログラム中の記録写真、映像を横浜美術館または横浜市芸術文化振興財団のウェブサイトや刊行物、その他媒体に掲載する場合があります。
*お預りした個人情報は、横浜市芸術文化振興財団個人情報保護方針に基づき厳重に管理するとともに、本プログラムに関するご連絡や、横浜美術館のご案内以外には使用いたしません。

《窓と壁》 2022年 パネルに綿布、ジェッソ、アクリル 75×322cm 撮影:山中慎太郎

2017年 九州産業大学芸術学部美術学科卒業。
現在、福岡県を拠点に活動。
2015年 「黄金町バザール2015」(横浜市)
2018年 「VOCA展2018」(大原美術館賞受賞)
2019年 浦川大志&名もなき実昌 二人展「終わるまで終わらないよ」(熊本市現代美術館)
2021年 「浦川大志×名もなき実昌展~異景への窓~」(大川市清力美術館)