2022年11月、横浜市立共進中学校に出張して美術の授業をおこないました。
講師にはグラフィックデザイナー、アートディレクターの菊地敦己さんをお迎えし、2年生4クラス別々に2時間ずつの授業をおこないました。
菊地さんは、青森県立美術館やPLAY! MUSEUMのVI・サイン計画や、ファッションブランドのアートディレクション、亀の子スポンジのパッケージデザインなど幅広い仕事を手掛けていらっしゃいます。
今回の授業では「PLAY デザインと遊ぶ」と題して、モノやカタチが持つ情報を汲みとり、その関係性を探るワークショップに挑戦しました。
まず初めに取り組んだのは、菊地さんがモニターに数秒間映し出した画像を記憶して描いてみる活動。
初めは円など単純な形が提示され、全員が正解できましたが、次第に円、四角形、三角形を組み合わせた複雑な形など難易度が上がると正解率が下がっていきました。
一方で、目玉のあるキャラクターのような形になると正解率が上がります。
菊地さんは
「単純な形は記憶に残りやすい。デザイナーがつくるロゴマークなどにシンプルなものが多いのはこのためです。でもシンプル過ぎると他との差がなくなってしまう。シンプルさの中にどう個性をつくるのかがデザイナーの大事な仕事です。」
とお話しされました。
次に取り組んだのは、皆で持ち寄った青と黄色の日用品をある法則に従って並べる活動。
青を担当するチーム、黄色を担当するチームの二つに分かれ、「大きさ」「硬さ」などのルールに従って様々なものを教室の床に並べていきました。
並び終えると、どれも身の回りにあるものばかりなのに、いつもとは違う新しい景色が広がります。
菊地さんは
「ルールを変えると、極にあるもの(一番大きい、一番硬いなど)も変わります。世の中の順列も基準を変えれば変化するので、見方を固定しないことはとても大切です。」
「デザインは絵を描いたり形をつくったりするだけでなく、今日やってみたように、もののもつ性質や情報の関係性を整理することが基本にあります。そう考えると普段の生活での整理整頓などでもデザインの考え方が必要だし、デザインは専門家だけがやることではなく、他の仕事にもつながることです。」
とお話しされました。
生徒の皆さんからは以下のような感想が寄せられました。
- 並べ方を変えるだけで見え方が変わっておもしろかった。視点を変えると、少し異なるものに見えておもしろいと思った。
- 並び方や特定のきまりを入れると人に違うイメージを与えられるのがおもしろかった。
- デザインにはシンプルさと個性の両方が必要で、その両方がそろうと人が覚えやすいって考えたことも無かったから、そうなんだってなった。
- 物のデザインの難しさが、自分で画像を見て、絵に描く事でよく分かった。シンプルでも、伝えたい事や個性をうめこむ事が大切だと思った。
- 絵がとても苦手な自分でもデザインを考えることができた。
- 自分の力でもののとらえ方が変わって、こうやって美術が生まれると気づいた。
このワークショップは、共進中学校2年生の皆さんが美術の授業で初めてデザインの課題に取り組む前におこないました。
皆さんの頭の中を解きほぐし、「デザインて何だろう?」という問いがむくむくと育っていくような機会になっていたらいいなと思います。
(市民のアトリエ担当)
[横浜市芸術文化教育プラットフォーム 横浜市立共進中学校 実施 2022/11/24(木)・25(金)]