2023年2月4日、横浜美術館長期休館中の仮拠点「PLOT 48」での「やどかりプログラム」、「私とdrawing」を開催しました。
その活動の様子をレポートします。
アーティストの川内理香子さんを講師に迎えてプログラムを実施しました。
川内さんは、食や身体への関心を出発点に、油絵具や鉛筆、針金、ネオン管など様々なメディアを駆使してドローイングやペインティングの作品を制作されています。
今回のワークショップでは、「ドローイング」をテーマに、木炭と針金を使い「私にとって、しっくりくる線」を探すことを試みました。
はじめに、ご自身の作品紹介や、川内さんが考えるドローイングについて話していただきました。
次に、今回のワークショップのポイントについて「1本の線を引いたことによってどんな空間が生まれるのか、どういう立体感が生れるかを考えながら描く。」「線は器のようなもの。輪郭を追いかけるが、描かれていない部分を想像しながら制作してみて欲しい」「触感や味、中身を想像してみる」などのアドバイスがありました。
手を動かす前に、参加者がそれぞれ持参したモチーフ(「好きな/気になる/描きたい」果物もしくは野菜)について、どうしてそのモチーフを選んで持ってきたのか1人ずつ発表していただきました。
「味が好きだから」「形が気になったから」「好きな農家さんの野菜だから」「瑞々しいものを描きたいと思った」「朝台所にあると嬉しいもの」など、人によって思い入れが異なります。どこに興味を持っているのかを言語化することで、手を動かす際に興味がある部分を意識しながら制作することを目指しました。
ちなみに、川内さんの作品には「バナナ」が度々登場します。川内さんは「シンプルな形でありながら『手』『月』『男性器』など様々な形や意味が見えて、描きながらイメージが派生し膨らんでいくところが面白い」とお話されました。
持参したモチーフをドローイングしていきます。
まずは、木炭紙に木炭で線を一発描きしました。描いた線を消してたり修正できないので、まずはよく観察してから描いていました。描き方は、ゆっくりと慎重に線を引く方もいれば、慣れた手つきで手早く線を引く方など様々でした。
次に、木炭と食パン(消し具)を使用して、新しい木炭紙に何度も線を引き直しながら「しっくりくる線」や「納得のいく形」を探るように描きました。
途中で川内さんが、アンリ・マティスのドローイングを紹介し「線を消した痕跡が残ってて、思考の様子が見てとれ、味わいが出ている」と説明しました。
さらに、何度も描き直した画面をすべて消して、一筆描きでモチーフを描きました。
参加者の作品を見ると、濃淡や筆圧、太さなど線に個性が表れていて、初めに一発描きしたものよりものびやかさが感じられました。
続いて、木炭から針金に画材を替えてドローイングに取り組みます。
「針金を使ってドローイング?」と思うかもしれませんが、木炭ドローイングの際に空間に線をひく事をイメージしたり、何度も線を引き直すことでモノの形を探ったりしていたので、参加者の方は違和感なく制作に没頭していました。
さいごに、一言ずつ感想をいただき、他の参加者が制作した作品を鑑賞しました。
参加者の感想
- 2時間あっという間だった。木炭では背面や重さなど見えない部分も想像しながら描くのが難しかった。
- 何回も描き直すのが印象的だった。線を探れた気がする。
- ものをいろんな角度でみることを意識したことがなかった。針金は中身も想像して制作することができた。新しいものの見方をすることができた。
- 描いているうちに、自分の好きな線ってあるんだなと気づくことができた。
- 「たまねぎ型」とよく使われるが、描いてみると全然イメージと違った。
上手に描くことを目的とせずに、手を動かしながらモチーフと対話する事を通じて、自身の内面とも向き合う講座となりました。
川内さんはワークショップの講師を務めるのは初めてだったそうですが、充実した内容と丁寧な進行が参加者から大変好評でした!
ワークショップに参加してくださった皆様も、ありがとうございました。
講師:川内 理香子(かわうち・りかこ) 1990年 東京生まれ アーティストウェブサイト https://rikakokawauchi.com |
(市民のアトリエ担当)
[やどかりプログラム「私とdrawing」 2023/2/4(土)14:00~16:00]