「《王様の美術館》からつむぐ物語」の裏話(後編)

IMG_0066_2.jpg「トライアローグ展」会場での入選作品公開の様子

20201112月に、横浜美術館を代表する所蔵作品のルネ・マグリット《王様の美術館》から創作した物語を募集したところ、1,000点を超えるご応募をいただきました。
20211月に入選作品と佳作を公開しましたが、ご応募くださった方は、その他にどんな物語があるのかが気になるところではないでしょうか。
今回は、ご応募いただいた全作品に目を通したエデュケーターが、全体から読み取れた傾向をご紹介したいと思います。

まず、ストーリー全体には以下のようなものが見受けられました。

・過去の記憶を辿る話
・孤独を抱えた男の話
・透明人間に出会う話
・山奥の美術館に迷い込む話
・世界が滅亡する話
・泥棒や盗賊が現れる話
・王様が世界中の宝を集めて美術館をつくる話
・美術館の収蔵品として囚われてしまう話
・昔訪れた美術館の話
・自殺や身投げする話
・殺人事件
・夢の中の出来事

絵画のトーンを捉えてか、全体として暗く、孤独を描いた作品が多い傾向にありました。
また、タイトルの《王様の美術館》からイメージを膨らませたお話もたくさん見られました。
ルネ・マグリットは作品タイトルを友人に委ねることがしばしばあったと言われ、この作品は旧友のスキュトネールが、自分が名づけたと証言しています。

次に、画面に描かれているものをどのように解釈していたか、その一部をご紹介します。

【風景】
・空
・林、森
・海原
・心の中の風景
・王様の王国
・故郷

【人のようなシルエット】
・男、紳士
・王様
・王様の使い、家来
・透明人間
・泥棒
・窓
・スクリーン
・キャンバス
・描いたものを装着している人
・幽霊
・男女が向かい合う影によって切り取られた空

【背後の構造物】
・バルコニー
・塀
・石橋
・棺桶

【背後の球体】
・鈴
・水晶
・魂
・郵便箱
・貯金箱
・凶器
・プロジェクター
・スマートスピーカー
・タイムカプセル
・人が吸い込まれたり出てきたりする装置

皆さんの解釈と同じものはありましたか?
こうして並べてみると、絵画から無限の想像が広がっていたことがわかります。
これらをパズルのように組み合わせたら、また新しいお話も創作できそうですね。

最後に、このブログでの特別編として、工房集に所属する金子隆夫(かねこ・たかお)さんが本プログラムに寄せて創作した作品をご紹介したいと思います。
工房集は、障がいのある人たちの表現を社会につなげる活動をしている福祉施設です。
金子さんは絵と文章で物語を綴っていて、それらが分かちがたく魅力的だったため、画像でご覧ください。

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書き出しの文章にドキリとさせられます。
マグリットは作品の中に度々不思議な球体を描き込んでいて、金子さんはこの球体をタイムカプセルと読み解いています。
皆さんからお寄せいただいた物語の中にも多様な解釈がありました。
マグリットの作品は今でも私たちに深い問いを投げかけ、それが魅力のひとつとなっています。
ぜひ《王様の美術館》からつむがれた様々な物語を味わった上で、もう一度絵画の魅力に触れていただければ幸いです。

入選作品、佳作はこちら

横浜美術館は、20213月から大規模改修工事のため長期休館に入りました。
ルネ・マグリット《王様の美術館》が出品される「トライアローグ展」は、2021423日(金)から627日(日)まで愛知県美術館に、20211120日(土)から2022116日(日)まで富山県美術館に巡回予定です。
お近くの方はぜひ足をお運びください。

(教育普及グループ 物語募集担当)

[「トライアローグ展」関連プログラム 《王様の美術館》からつむぐ物語]