2020年11〜12月に、横浜美術館を代表する所蔵作品のルネ・マグリット《王様の美術館》から創作した物語を募集し、2021年1月に入選作品と佳作を公開しました。
今回は、これまでご紹介できなかったこのプログラムの裏話を前・後編でお届けしたいと思います。

応募作品を保管しているファイル
今回の企画は、コロナ禍のため人が集まってのワークショップが開催しにくい状況でも、皆さんが楽しく参加でき、作品鑑賞を深めるようなプログラムを実施したいという思いからスタートしました。
でも準備段階では、果たしてどのくらいの数の作品が集まるのか不安がありました。
なんとか100点を超えるご応募がありますように・・・そう思いながらチラシを配ったり、学校の先生に応募を呼びかけるお手紙を書いたりしてこつこつと準備を進めました。
ところが募集を開始すると、どんどん作品が集まり、締切までには1,002点ものご応募をいただくことができました!
一般からのご応募272点に加え、横浜市内外の学校が授業などで取り上げてくださり、730点の作品が届きました。
審査会の様子
みなさんから届いた力作すべてにエデュケーターが目を通しました。
魅力的な作品ばかりだったため、そこから入選作品を絞り込むことはとても大変だったのですが、審査にあたっては、絵画に描かれているものを起点として物語が発想されているか、さらに《王様の美術館》の鑑賞を深めることができるかという観点を重視しました。
写真は、審査会で蔵屋館長が《王様の美術館》の絵の構造を解読しているところです。
この絵画が成り立つ本質に目を向けた3作品が見事入選となりました。
また、ご応募いただいた作品のバリエーションを紹介したいという思いから、当初予定していなかった「佳作」と「子どもの部」を設けてより多くの作品を紹介することにしました。
2020年12月、横浜美術館に俳優・ダンサーの森山未來さんをお迎えして、入選作品の朗読の収録をおこないました。
映像ディレクターは、西野正将さんです。
この場所、どこだかわかりますか? 実は「レストラン ミュゼ」があった場所です。
横浜美術館に併設された「レストラン ミュゼ」は2019年6月に惜しまれつつ閉店しましたが、西野ディレクターが元レストランの重厚な雰囲気を気に入り、今回の撮影場所に選びました。
ここは改修工事によって別の機能に生まれ変わる予定のため、今回の映像がレストランの内装の様子をとどめた最後の記録になりました。
西野ディレクターは森山さんに
「目の前の子どもに読み聞かせるようなイメージで」
と伝え、撮影が始まりました。
森山さんの落ち着いたトーンの語りで、物語に新しい命が吹き込まれました。
続いて閉館後の展示室に移動し、森山さんに3つの物語それぞれのイメージを身体で表現していただきました。
夜の静寂に包まれた美術館での作品を前にした渾身のパフォーマンスは、まるで絵画に捧げられているように見えました。
それと同時に、これら一連の出来事が《王様の美術館》と題された絵画が導く物語の一部であるかのようにも感じられました。
実際にはもっと長いパフォーマンスでしたが、完成した映像では、朗読の声に重ねるように印象的な動きの断片が挿入されています。
森山さんは
「お三方それぞれがどういうイメージでその物語を描いたのかを想像しながら(身体表現で)遊びました。楽しかったです。」
とお話されました。
展覧会は閉幕しましたが、森山さんの朗読・パフォーマンスの映像は引き続きウェブサイトでご覧いただけます。
横浜美術館の改修前の貴重な姿と共にお楽しみください。
入選作品(映像とテキスト)、佳作(テキスト)のご紹介はこちらから
(教育普及グループ 物語募集担当)
[「トライアローグ展」関連プログラム 《王様の美術館》からつむぐ物語]