活動報告:横浜市芸術文化教育プラットフォーム[本郷中学校]

市民のアトリエは、横浜市立本郷中学校に出張し、アーティストの岩井優(いわい・まさる)さんを講師に迎えて20211月から2月に全3回の授業をおこないました。

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岩井さんは、洗浄や清掃という日常行為に着目し、その背後にある社会的・記号的意味を顕在化するような映像やインスタレーション、パフォーマンスなどを発表するアーティストで、「ヨコハマトリエンナーレ2020」にも参加しています。
ヨコハマトリエンナーレで展開した「参加型アクション《彗星たち》」から連なる活動を、今回は本郷中学校の2年生4クラスと一緒に取り組みました。

授業のタイトルは「考えるための表現 掃除とマスクとキャットウォーク」です。

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1回目の授業では、まず岩井さんの映像作品を鑑賞しました。
水の中でコップ、サングラス、野菜、鶏肉、魚、本、靴などを次々にスポンジと洗剤で洗っていく様子が写しだされる《ギャラクシーウォッシュ》(2008年)。街路に落ちた犬の糞を化粧品や衛生用品でデコレーションしていく《路上のコスメトロジー》(2012年)。
刺激的な映像に、教室からは「えー」というどよめきや、「汚い」という声が上がりました。
岩井さんは
「『きれい/汚い』の境界は定まったものではなく、移ろうもの。自分たちが『きれいにする』という行為で落とした汚れは一体どこにいくのか、考えてみてほしい」
と生徒たちに問いかけました。

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続いて、造形のワークショップをおこないました。
黒色に塗装した紙袋を全員に配り、それぞれの家庭から出たパッケージを取り付けて、頭から被るマスク=仮面の制作をおこないます。
これは、ヨコハマトリエンナーレで岩井さんがおこなった「参加型アクション《彗星たち》」と同じ活動です。

(参加型アクション《彗星たち》について詳しくはこちら

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卵やお菓子などの食品の容器や包装紙、電化製品の空き箱などを持参した生徒たちは恐る恐る作業を始めましたが、手を動かすと夢中になっていき、あっという間に1回目の授業が終了しました。

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2回目の授業もマスクづくりの続きをおこないました。
前回の授業で感覚を掴んだ生徒たちはさらにたくさんのパッケージを持ってきて、どんどんマスクが賑やかになっていきました。
使い捨てコンタクトレンズの空き容器、お正月に食べた伊達巻のプラスチック製巻き簀、お気に入りのプラモデルの箱とライナー(パーツを取り外した後に残る枠)など、選び方にも個性がうかがえます。
また、パッケージの中から文字だけを切り抜いて文章をつくったり、バーコードだけをコレクションしたり、アルミパッケージを細く切って髪の毛のようにしたり、本体の紙袋にハサミを入れて立体的に加工したり、造形方法にもたくさんの工夫がありました。

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さらにこの日の後半には、廊下で清掃パフォーマンスに挑戦しました。
24名のチームで、マスクを被り、箒やモップを持ち、10mほどの廊下を掃除しながら進み、真ん中でポーズを決めて、再び掃除しながら進むというもの。

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どんなポーズを取るかチームのメンバーで相談しながら進めていきます。
岩井さんはこの様子をビデオに撮影。これは次回の授業での清掃パフォーマンスのリハーサルも兼ねたものです。

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3回目、授業最終日。
12回目はクラスごとに美術室で授業をおこないましたが、この日は4クラスが体育館に集まっての合同授業です。
体育館の中央にシートを敷いてつくられた即席のキャットウォーク(ファッションショーでモデルが闊歩するランウェイ)が2年生を待ち構えます。
岩井さんがこの日のために制作した音楽を流すと、自然に手拍子が沸き起こりました。
学年全員が注目するなか、チームごとに清掃パフォーマンスのスタートです。

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初めは人前に出ることを嫌がっていた生徒たちも、マスクを被ると顔が見えなくなり吹っ切れたのか、思い切りの良いパフォーマンスを披露してくれました。
ジャンプしたり、蛇行したり、頭を振り乱したり、箒を正面に掲げて行進したり・・・個性あふれるパフォーマンスで体育館が熱気に包まれました。

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そして最後に岩井さんからお話がありました。
「今回使った紙袋はベースに黒鉛を塗っています。黒鉛は身近なところでは鉛筆に使われていて、世界で初めての原子炉にも使用された素材です。
10年前に東日本大震災が起こり、原子力発電所から放射性物質が降り注ぎました。僕は東北でその除染作業に携わりました。
みんなが制作したマスクには実はそのような背景があり、それにみんなの日々の生活から出たパッケージを取り付けてもらいました。
美術は身の回りの生活や社会、歴史とつながっていて、そういう時間の積み重ねの中に表現というものがあります。」

刺激がいっぱいだった3日間の授業。それぞれの生徒たちの中に新しい気づきの芽があることを願っています。
岩井さん、どうもありがとうございました。

(市民のアトリエ担当)

[横浜市芸術文化教育プラットフォーム 本郷中学校 実施 2021/1/19・26・2/2(火)]