活動報告:参加型アクション「エピソード06 岩井優《彗星たち》」

市民のアトリエは、「ヨコハマトリエンナーレ2020」の関連プログラムを二つ実施しました。
今回は、参加型アクション「エピソード06 岩井優《彗星たち》」をご紹介します。

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Zoomで参加者と対話するアーティストの岩井優さん

「ヨコハマトリエンナーレ2020」では、展覧会の会期の前後も含めた日程で、アーティストによるイベント、サウンド・インスタレーション、キュレータ―によるプロジェクトなどを「エピソード」として実施しました。
その参加アーティストの一人である岩井優(いわい・まさる)さんは、定期的に携わった除染作業の経験を下敷きに、一般参加者と共に清掃にまつわるアクションとディスカッションをおこないました。
市民のアトリエが運営を担い、7月から10月にかけてオンラインを主軸に展開したこの活動を振り返ります。

action_2.JPG紙袋に黒鉛を塗る岩井さん

まず、参加を表明してくださった方には紙袋を郵送しました。
この紙袋には黒鉛が塗られ、目の部分が丸くくり抜かれています。
これをベースにして、頭から被るマスク=仮面をつくります。
黒鉛は鉛筆の素材として身近なもので、世界で初めてつくられた原子炉にも使用されたことから、近年の岩井さんの作品に欠かせない要素のひとつとなっています。

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次に、web会議システム「Zoom」を使い、横浜美術館にいる岩井さんと参加者の皆さんをオンラインでつなぎ、マスクを制作するワークショップをおこないました。
お互いの様子を画面越しに見ながら、ベースとなる紙袋に身の回りのパッケージを取り付けて自由にカスタマイズしていきます。
「パッケージ」の解釈は人それぞれ。食品の容器や梱包資材など、生活の中で出たものを使います。
30分後・・・

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色とりどりの個性豊かなマスクが完成しました!
パッケージは、ものや商品を包み、その存在を際立たせるものですが、役目を終えるとゴミになります。
それを身につけることにどのような意味が生まれるのか・・・これからの実践の中で考えていきます。

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岩井優 《彗星たち》 2020年 「ヨコハマトリエンナーレ2020」での展示風景

続いて、岩井さんが制作した映像を鑑賞しました。
これは「ヨコハマトリエンナーレ2020」の会場に展示されていたドローイング、テキストと連動した内容で、岩井さんが携わった東日本大震災後の除染作業での指示や注意事項がコミカルかつ辛辣に表現されています。
先ほどまでのマスクを被った楽しい雰囲気から一転、参加者の皆さんが真剣な表情に変わったところで、岩井さんからお話があります。
「この除染作業のフォーマットに沿って、これからマスクを被って清掃してもらいます。」
除染作業では、放射性物質が体内に入ることを防ぐために、防護服やN95マスクの着用が義務付けられています。
今回制作したマスクには、そのような身を守るイメージに、各自をカモフラージュしたり装飾したりする意図も盛り込まれています。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中でマスクが着用されるようになった現状をも映し出しているようです。
次回にZoomで集まるときまでに、各自このマスクを被って清掃をおこない、記録写真を撮ることを約束して、この日は解散しました。

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1-2週間後、2回目のZoomでの集まりを持ち、それぞれの清掃アクションの記録写真を見ながら感想を話し合いました。
写真と感想の一部をご紹介します。

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「掃除をしていたらマスクからパーツが外れて落ちてしまった。自分は掃除をしているのか、ゴミを出しているのかわからない状況だった。」

「外に出て落ち葉を掃いたが、葉っぱはいつからゴミになるのだろうか。その境界が気になった。」

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「防護服のようなものを身につけ、カスタマイズしたマスクの下にN95マスクを着用して清掃した。真夏だったので本当に息が苦しく、除染作業員の方の苦労を身をもって知った。マスクを外したい衝動に駆られた。」

「掃除をやって考えたのは、これはものの移動でしかなく、ゴミはなくならないのだということ。ホウキを動かすことでゴミが動いていくだけ。除染もそうだけど、汚染物質をなくしているわけではなくて、エリアを移動させているだけ。いろんなことがそうなのかもしれないと思った。」

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「自宅を掃除し、撮影した。私は一人でカメラに対峙しているけれど、カメラの向こう側には今回の参加者や、インスタを通して見ている人がいる。その視線を感じ、少し不気味だった。カメラのこちらとそちらの境界線を感じた。」

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「最近父親を亡くしたが、新型コロナウイルスの影響で帰省がかなわず葬儀に参列できなかった。清掃とは掃き清めることだと思う。そのため、天に近い屋上に行き、気持ちを込めて掃除した。」

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自作のマスクを被って掃除をするという共通の経験から発せられた感想や問題意識は多岐にわたりました。
写真ではポップなマスク姿が目立ちますが、このアクションでは参加者一人ひとりの心の動きや気づきの蓄積こそが大切で、写真はそれを共有するための入口のようなものだったと言えるかもしれません。
これらの写真はヨコハマトリエンナーレの会場で岩井さんの展示モニターに更新されたほか、Instagramでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

岩井優《彗星たち》公式Instagram

この二度にわたるZoomでのセッションを1セットとして、3回繰り返すことで、多様な参加者の経験が積み重なっていきました。

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また、オンラインでの活動と並行し、ヨコハマトリエンナーレの会場では、岩井さんとトリエンナーレのサポーターが二人一組となって会期中に合計14回の清掃アクションをおこないました。
各回とも、横浜美術館の中で自作のマスクを被り、約20分間掃除しました。

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これにより、オンラインのモニター上での出来事と、美術館内部で実際に起きていることが接続し、より実体を伴うものとしてアクションの輪郭が浮かび上がったように思います。
清掃アクションに遭遇した来場者の様々な反応も印象的でした。

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このように参加型アクション「エピソード06 岩井優《彗星たち》」は、たくさんの人を巻き込みながら、清掃アクション、話し合いの実践を繰り返しました。
横浜美術館を拠点としてオンラインを主軸に展開したことにより、全国各地で多彩なアクションが繰り広げられ、様々な立場の方と意見を交わすことができました。

タイトルにある「彗星」は、別名「ほうき星」とも言われます。
天空に尾を引いて輝く彗星は、塵や氷が集まってできています。
このアクションは、ほうきを手にして各地に散らばる人々によって構成されているのです。

(市民のアトリエ担当)

[参加型アクション「エピソード06 岩井優《彗星たち》」 実施2020/7/19,26,8/9,23,9/6,20,10/11(日)]