活動報告:ライブラリー・トーク vol.3 畠山直哉「図書館で出会う写真」

市民のアトリエは、「写真集」をテーマにしたトーク・シリーズを開催しています。
3回目となる今年は写真家の畠山直哉さんを講師にお迎えし、Zoomを利用してオンラインで実施しました。

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トークは二部構成で、前半は畠山さんが横浜美術館の美術情報センターでセレクトした写真集についてお話されました。

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美術情報センターには約11万冊の蔵書があり、そのうち約5,000冊を写真関連資料が占めています。
畠山さんはこの日のために二日間美術情報センターに通い、熱心に蔵書をご覧になりました。

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その中からまずアンドレ・ケルテスの写真集をとりあげました。
モダン・フォトグラフィーの写真家でケルテスから影響を受けていない人はいない、というほど重要な写真家だと畠山さんは言います。
ケルテスが画家ピート・モンドリアンのスタジオを撮影したカットなどを紹介しながら、絵画や彫刻には真似できない、写真の現前性や記録性、唯一性に触れ、1920〜1930年代は写真が同時代を語るボキャブラリーを持ち得た時代だったとお話されました。

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また、畠山さんが今回の美術情報センターでの調査で初めて出会った写真集として『DOUBLE TAKE : A Comparative Look At Photographs』(CLARKSON N. POTTER1981年)を紹介しました。
これは、複数の写真家が同じ被写体または似たイメージを捉えた写真を見開きページに並べて掲載している写真集です。
参加者からも実際に手に取りたいという声が多くあがりました。

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畠山さんは、
「現代は誰でも簡単に写真が撮れ、液晶画面で毎日たくさんの写真を目にする時代で、昔とは写真に向き合う態度が大きく変化している。そのことはわかっているつもりだが、やはりじっくりと写真を味わい、読み取ることが大切なのではないか。」
とお話されました。図書館は、たくさんの写真集に触れるのにうってつけの場所である、とも。また、
「テクノロジーがいくら進歩しても、人間の頭の中に流れる時間と肉体のもつ時間とにはズレがあり、そのバランスをどうとるのかが写真という仕事のひとつの大きなテーマであると思う。」
という言葉には、畠山さんのこれまでの経験に基づく写真への決意が滲んでいるように感じられました。

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後半は聞き手に松永学芸員を迎え、畠山さんご自身の写真集についてお話しいただきました。
写真集と一言で言っても、個人の作品としてつくられたもの、展覧会のカタログとして刊行されたものなど様々です。
その中で『気仙川』は、ブックデザイナーの鈴木成一さんの「小学生の絵日記のようなものにしたい」という提案から編まれた写真集だということです。
畠山さんは東日本大震災の直後、オートバイを走らせて故郷の陸前高田に向かいました。
雪の中で立ち往生した様子などを日記のように綴ったエッセイと、震災以前に撮影していた故郷の何気ない日常の写真が配置されています。
オートバイで雪の中を走っていたときの頭の中のイメージが生々しく再現されており、ご自身の他の作品にはない構成だと言います。

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また、非常にめずらしい造本の写真集として『Atmos』(Nazreali Press2003年)があります。
これはフランス アルルでの滞在制作を機に制作された写真集で、2冊の本がハードカバーでつながった形をしており、同時に4ページを開くことができます。
左側には工業機械と建築、右側には周囲の穏やかな風景が掲載され、その対比や組み合わせを楽しむことができる写真集です。

今回はライブラリー・トーク初めてのオンライン開催ということで、参加者の皆さんには写真集を直接手に取っていただけなかったことが残念でしたが、モニター越しに写真集をじっくりご覧いただいたり、遠方の方にご参加いただいたりといったオンラインならではの収穫もありました。

20213月から横浜美術館は長期休館となりますが、市民のアトリエでは今後もこのようなオンラインでの発信を継続していければと考えています。

ご参加くださった皆様、畠山さん、どうもありがとうございました。

(市民のアトリエ担当)

[ライブラリー・トークvol.3 畠山直哉「図書館で出会う写真」 実施 2021/2/21(日)]