柵瀨茉莉子(さくらい・まりこ)さん(右)と、展覧会担当の片多学芸員(左)
「New Artist Picks 柵瀨茉莉子展|いのちを縫う」の関連プログラムとして、おうちワークショップ「木の葉を縫う、持ち歩く」を実施しました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、柵瀨茉莉子展は、当初予定されていた2020年3〜4月から11〜12月に会期を変更して開催されました。
それにあわせ、ワークショップも時期と内容を見直しました。
当初は横浜美術館に参加者が集まるワークショップを春に予定していましたが、市民のアトリエとしては初めての「おうちワークショップ」というかたちで秋冬におこないました。
これは、お申込みいただいた方にワークショップ・キットを郵送して、好きな時間、場所で制作に取り組んでもらうというもの。
ワークショップ・キットの中には、コットンバッグ、柵瀨さんが選んだ色の糸、針と共に、作家の手描きイラストを交えた作り方の解説、メッセージカードが入っています。
参加者は身のまわりにある木の葉や草花などの植物を集めて、キットの手提げ袋に縫い付けて世界に一つのトートバッグをつくります。
さらに、アーティストの柵瀨さんと参加者をオンラインでつなぐ作品発表会を12月13日におこないました。
Zoomをつかった発表会に参加してくださったのは6組9名の皆さん。
完成した作品とエピソードの一部をご紹介します。
こちらは図書館近くで拾ったイチョウの葉を縫い付けたという作品。
規則正しく針を動かしていくのが心地よかったとのこと。
本を入れるのに使いたいとお話されていました。
「鶴が飛んでいるみたい!」と柵瀨さん。
続いてこちらは、葉っぱや種子、ご自身で育てた綿を縫い付けた作品。
実際に使ってみたところ、人目をひくのでよく話しかけられ、会話が弾んだとのこと。
また、いつの間にか種が落ちていたそうで、自分が鳥になったようだとお話されていました。
これに対して柵瀨さんは
「私は身近な生活の中にあるものとしてトートバッグを選び、それに葉を縫い付ける作品制作を始めました。(持ち歩くことで生まれた他者とのコミュニケーションや知らないうちに種子を蒔いていたというエピソードは)『なぜ鞄なのか』という問いへの一つの回答を示してくれたようです。」
とコメントされました。
今回のワークショップにあわせて柵瀨さんが制作した作品も紹介してくださいました。
展覧会開催のお祝いに蘭をいただいたことから、その花びらを縫い付けたもの。
これまで蘭の花には苦手意識があったそうですが、これを期に親近感がわいたと言います。
今は花びらが落ちて、色とりどりの糸だけが残っています。
最後に柵瀨さんは、
「今年はコロナ禍で家にいることが長く、今までと違う時間の流れで、身の回りの植物を例年より美しく感じられる。身近なものに目を向けることができる時代が来て、またそうした身近なことを感じる気持ちを育てる時間なのかなと思う。」
とお話されました。
新型コロナウイルスの影響により、開催方法を見直したこのプログラム。
当初の予定通り現場に集まり実施できなかったことが残念だった一方で、このような方法でおこなったことで新たな発見もありました。
一つ目は、普段なかなか横浜まで足を運べない遠方にお住いの方や、子育て中の方が参加してくださったこと。
二つ目は、それぞれの時間や場所で取り組むかたちにしたことで、制作もオンライン発表会も、一人でじっくり、親子でわいわいなど、それぞれのスタイルで楽しんでいただけたこと。
普段の講座以上に幅広い層の皆さんと、ゆるやかにつながることができる機会となりました。
市民のアトリエでは今後も様々な取り組みを続けていきます。
(市民のアトリエ担当)
[おうちワークショップ「木の葉を縫う、持ち歩く」 オンライン発表会 2020/12/13(日)14:00~15:30]