[イベントレポート]市民のアトリエワークショップ「抽象彫刻の魅力『澄川喜一の世界』」(後半)/「澄川喜一 そりとむくり」展

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続いて、本展展示室内で澄川先生によるギャラリートークが行われました。
作品解説や制作に対する思い、技法・素材などについて、たっぷりとお話しいただきました。

プロローグ:はじまりとしての錦帯橋
創作の原点である錦帯橋についてお話される澄川先生。錦帯橋が崩れる瞬間をその目で実際に見ていたそうです。
橋が壊れ、一瞬で周りの風景がかわる様をみて悲しくて涙が出たと当時の心境を語られました。また錦帯橋に使われている木の素材や橋の構造についても解説いただきました。

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I. いしずえ:具象をきわめる
師である平櫛田中と菊池一雄の作品の前で学生時代の思い出をお話しいただきました。澄川先生は藝大で平櫛田中教室に入りましたが、澄川先生が藝大に入った年に定年制が導入されて、平櫛田中は退官されたそうです。その後、菊池一雄に塑造を徹底的に学んだ澄川先生。「最初は粘土の付け方など菊池先生の真似をしていた。だけど《S君》から変わっていった」と教えてくださいました。

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次に、具象彫刻から抽象彫刻「MASK」シリーズへと展開した頃のことをお話しいただきました。
「MASK」シリーズは、澄川先生が甲冑や仮面を見ていた時に「人間がいないのに、そこにいるように見える」と感じたことから制作されたそうです。確かに、作品を見ていると今にも息づかいが聞こえてきそうです。みなさんにも会場で不在の中に感じる存在感を肌で感じていただきたいです。
また、「MASK」シリーズの最初の頃は、まだノミ跡を残して作品を作っていたそうです。そこからだんだんとノミ跡を残さない木の美しさを生かした作品へ展開していったと作品を前に説明してくださいました。
制作秘話として、《MASK VI》は餅臼を半分にして作った作品と教えてくださいました。

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II. 深まり:素材と向き合う
「MASK」シリーズから、「そりのあるかたち」への展開する中で、アクリルや石などさまざまな素材を用いて作品制作を行ってきた澄川先生。「僕は作品制作にアクリルを使いはじめた初期の作家だよ」と教えてくださいました。当時はアクリルは高かったそうです。

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III. ひろがり:公共空間を活かす
東京湾アクアライン川崎人工島「風の塔」や、東京スカイツリー®のデザイン監修など、大規模な公共プロジェクトも多く手掛けられた澄川先生。展示パネルを前に、建造物の構造についてご説明いただきました。
東京スカイツリー®は見る角度によって、「そり」と「むくり」が見られるので、東京スカイツリー®を訪れた際にはぜひいろいろな角度から眺めてみてください。また、東京スカイツリー®の足元にある石が3本立っているモニュメントは澄川先生の作品《TO THE SKY》です。こちらもお見逃しなく!

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横浜市内にも架橋や記念碑をはじめ多くの公共造形物を手掛けていらっしゃいます。
大岡川にかかる「道慶橋」(横浜市南区)は、僧侶が持つ錫杖をデザインに取り入れたとのこと。僧侶が錫杖を持ってシャンシャンと音をさせなら歩くみたいに、「道慶橋」の錫杖部分も風が吹くと音がなるそうです。このお話を伺って、実際に「道慶橋」に行って音を聞いてみたくなりました。
3月、4月には、横浜市内にある澄川先生の公共造形物をめぐる横浜シティガイド協会との「連携ガイドツアー」(全3コース)を開催予定です。「道慶橋」に行くコースもありますのでこの機会にぜひご参加ください。
「連携ガイドツアー」の詳細はこちら 
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中止または延期になる場合があります。最新の状況は「澄川喜一 そりとむくり」特設サイトまたは本ウェブサイト「お知らせ」にてご確認ください。

IV. 匠:そりとむくり
木の美しさ、木の持っている特性を生かした「そりのあるかたち」シリーズ。作品の組み方や作品の裏側に穴を空けているのは木が割れるのを防ぎ軽くするためであるとか、素材の種類や木目(板目[いため]と柾目[まさめ])の解説をしてくださいました。みなさんも展示をご覧になる際には、作品の裏側を覗いてみたり、木目を観察してみてください。

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板目[いため]と柾目[まさめ]とは...。
板目、柾目は両方とも、丸太を縦に切っています。切る位置によって、木目の模様が違います。
簡単に言うと、木目が山のようになったり、輪になっているのが板目(画像右)。丸太の中心ではなく、皮の方を切っています。
木目が縦の筋になっているのが柾目(画像左)。丸太の中心に向かって直角に切っています。
バームクーヘンをいろいろな方向に切るとかわりやすいとおっしゃっていました。

澄川先生の作品は曲面が多く、曲りカンナ(反り台)をかけているので、色々な模様の木目が出ています。

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ギャラリートークを経て、ワークショップ参加者と作家、そして作品との距離がぐっと近づくのを感じました。また、アトリエを持ち、エデュケーター(教育普及担当)と協働が可能な当館の特徴を生かした充実のワークショップとなりました。

作家自身によるギャラリートークが聞きたいという方は、2020年5月2日(土)14時から開催の「澄川喜一によるギャラリートーク」へぜひご参加ください。なんと澄川先生の89歳のお誕生日に開催するイベントです。みなさまのご来場をお待ちしております。

■澄川喜一によるギャラリートーク
日時:2020年5月2日(土)14時~15時
会場:企画展展示室
参加費:無料(事前申込不要、当日有効の本展観覧券が必要)

「澄川喜一 そりとむくり」特設サイト

広報担当 梅澤のど佳